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Monday, June 29, 2020

「GAFAはパートナー、中小企業のデジタル化を支援していく」 | リコー・山下良則社長 - 週刊東洋経済プラス

リコーの山下良則社長はアフターコロナの戦略について、「現場のデジタル化を強化する」と意気込む。写真は2019年(撮影:今井康一)

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、在宅勤務が奨励されている。オフィスから人が消えたことの影響を直接受けたのが事務機器・複合機業界だ。

先進国を中心に外出自粛や移動規制の緩和が進み、オフィスには人が戻りつつある。コロナ前から、オフィスはペーパーレス化の流れがあり、事務機器や複合機を使って印刷する量は減っていた。

「在宅勤務は当たり前」というアフターコロナの新常識が形成されつつある中、複合機メーカーはビジネスをどう展開していくのか。業界大手リコーの山下良則社長に聞いた。

──世界的にリモートワークが当たり前になりました。リコーの3月の複合機販売台数は、前年同月比で18%減少しました。

オフィスでのプリントボリューム(印刷量)は落ちている。遠隔ネットワークで把握している日次データを見ると、(ボリュームが)ものすごく落ちたところもあれば、そうでもないところもある。コロナによる移動制限が緩和された途端、プリントボリュームが2019年よりも増えた例もある。

4~6月の実績を分析すれば(2021年3月期業績の)見通しも出せると思う。

──5月の決算説明会ではコロナによる営業利益への影響として、「300~400億円」(仮定A)と「600~700億円」(仮定B)の2つのシナリオを出しました。

コロナ影響が長期化せず、7月から回復すれば300~400億円程度の減益にとどまるが、第2波が起きるなど長期化すれば、減益幅が大きくなる。ただ、そのための財務の流動性や安定性は確保している。日本の実態はAに近く、アメリカはBに近い。

──「アフターコロナ」の世界ではプリント需要がなくなることにどう対応しますか。

2021年3月期は危機対応と変革加速の年と位置づけている。良い印刷ができる機械を製造して世界に売ってきたが、それだけではなく、デジタルサービスの提供というビジネスモデルに変えていかなければいけない。

これまでもペーパーレスの流れはあり、プリンティングだけではなくオフィスのITサービスも手掛けてきた。コロナによって今後3年間に起きると想定していた変化が3カ月間のうちに起きており、ITを支援するデジタルサービス会社への変貌を急がなければならない。

これまでデジタルサービスを不要としていた顧客の中には、リモートワークのために急にデジタルサービスを必要とするところも出てきた。コロナが顧客の思考を変える後押しをしている面がある。

GAFAとは戦わない

──リコーにとってのデジタルサービスはどんなイメージなのですか。

社内でも「GAFAと戦うのか」と聞かれるが、そういうわけではない。GAFAは世界のプラットフォーマーだが、われわれは中小企業に寄り添うことを目指している。

マイクロソフトのオフィス365やセキュリティソフトなど、業務に必要なソフトウェアやアプリケーションをリコー経由で導入してもらい、中小企業のデジタル化を支援している。

2019年は「つなぐ」をキーワードに、中小企業のオフィスと製造や営業などのやりとりをサポートした。今度はそこにホーム(自宅)をつなぐ必要も出てきた。これまでプリントして紙でやりとりしていた情報がデータでのやりとりに変わる。そのやりとりをリコーがデジタルサービスとして提供していく。

2020年3月期は、国内販社のリコージャパンが過去最高益となった。ITなどのオフィスサービスが牽引し、オフィスプリントの売上高を初めて抜いた。デジタルサービス会社に変貌する自信にもなった。

やました・よしのり/1957年生まれ、兵庫県出身。1980年広島大学工学部卒業、同年リコー入社。2011年に総合経営企画室長。ビジネスソリューションズ事業本部長や副社長などを経て、2017年4月より現職(撮影:今井康一)

──中小企業のITサービス導入の現状は?

中小企業の6割強はいまだにファックスで顧客とやりとりしている。日本企業の99%は中小企業で、日本の技術力をリードしているが、本業の技術以外のところでIT環境(の変化)についていけていない。それを手助けするのもリコーの役割だ。

ある中小メーカーでは、毎日の出来高をエクセルに入力して、集計している。普段からその会社に行っているリコーの営業パーソンやシステムエンジニアは、その会社にどんなアプリケーションが必要で、顧客の業務を改善できるかをよく把握している。

そうなると、GAFAはリコーの敵ではなく、パートナーとなる。現在、国内ではすでにITサービスを手掛ける約100社がリコーのパートナーとなり、企業が必要とするITサービスをリコーがパッケージ化して提供している。ソフトウェアを開発するIT企業にとっても、開発した製品をリコーにどんどん売ってほしいという流れになる。

──海外のITサービスの現状は?

国ごとに状況は異なる。ヨーロッパは、デジタル行政が発達している北欧とそうではないイタリアやスペインなどとで、必要とされるITサービスが異なる。また、アメリカは中小企業でもITリテラシーが高いところが多く、社内ネットワークの作成やITツールの導入を自前で済ませてしまうケースも多い。

したがって、日本、欧州、北米と地域に合ったサービスを整える必要がある。そのため、それぞれの地域にITサービスの開発権限を委譲していった。

──複合機とITサービスとでは、開発の考え方も変わるのですね。

複合機のようなハードは印刷などの機能がしっかりしていれば、世界のどの顧客でも使ってくれた。ただ、デジタルサービスは顧客の要望によってどんどん変えていかなければならない。

以前は世界一律のソフトウェアを使っていたが、各地域から修正要望が出ると、対応に時間がかかり、結局顧客に使われなくなるなっていた。

複合機を販売していた社員に「これからはデジタルサービスを提供する」と言っても、簡単に変われない。日本ではデジタルサービスの売上割合を徐々に上げてきたが、ヨーロッパも同様に増やしていく。

──デジタルサービス化を進めていくと、メーカーとしてのブランドや存在感がなくなりませんか。

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