企業や自治体、官公庁での利用を想定したNECのノートPC「VersaPro」シリーズ。その中で、インテルvProプラットフォーム対応で最新の高性能CPUを搭載するハイエンドモデルとして位置付けられているのが、「VersaPro タイプVD<VD-K>」。外観は、オフィス向けと言える外装仕上げにより、シンプルで飽きのこないデザインとなっている。オフィスでの利用がメインと考えると、逆にこのデザインがしっくり馴染みそうだ。
本体サイズは368.4×254×24.9mm。15.6型ディスプレイ搭載のビジネスノートPCとしては、標準的なサイズと言っていいだろう。重量は約2.2kgと、こちらも標準的な重さだ。さすがにモバイルノートPCほどの機動性はないが、そこまで苦労せず持ち運べるはずだ。
コロナ禍以降、オフィスの形が大きく変わり、従業員固有のデスクを用意せずにオフィスをフリーアドレス化したり、オフィスだけでなく自宅などのオフィス外でも業務を行なうハイブリッドワークを採用する企業が増えている。業務が終わると利用するノートPCを保管場所へ移動させたり、テレワークのために持ち運んだりする必要がある。となると、オフィス向けPCであっても高い耐久性が求められることになる。
そこでVersaPro タイプVDでは、150kgfの天面加圧試験やコネクタ挿抜試験などの耐久性試験を実施し、それらをクリアする耐久性を確認している。電源コネクタはより多くの抜き差しを想定し、メイン基板から独立して搭載。これにより、フリーアドレスオフィスやテレワークなど、持ち運びが増える働き方でも安心して利用できるはずだ。
そして、先述の通り、VersaPro タイプVD VD-Kは、インテルvProプラットフォームに対応するのも見逃せない点だ。ハードウェアレベルでマルウェア感染リスクを低減する機能を搭載しており、近年巧妙化・悪質化しているマルウェアなどの攻撃に対応できる優れたセキュリティ性を実現できる。
セキュリティについては、インテル ブート・ガード機能により、BIOSの改ざんまでも防げる。インテルvProプラットフォーム対応機なら、CPU起動前にBIOS内容が検証され、確実な安全性が確保される。これにより、たとえばマルウェアが仕込まれたBIOSファームウェアでOSの起動プロセスが進んでしまう、といったことを避けられる。
また、遠隔でクライアントPCの管理やサポートを行なう機能を用意する点も特徴。遠隔でアプリのアップデートや不具合などへの対応が行なえることで、特に「Intel Endpoint Management Assistant(Intel EMA)」を活用すると、働く場所が固定されない現在の働き方でも高いレベルでクライアントPCを管理でき、セキュリティのリスクを低減できるのはもちろん、管理者の負担も低減できる。
インテルvProプラットフォームについては、前述のようなセキュリティや遠隔管理というイメージが強い人も多いだろう。それ自体は間違っていないが、それ以外にも「安定性」を提供というメリットもある。その1つの要素が「SIPP」(Stable IT Platform Program)だ。
会社でPCを大量に導入するときに、業務アプリケーションの追加や、OSやアプリケーションの設定といったキッティング作業を、情シスが1台1台手で行なっていると大変だ。そこで、マスターイメージを作ってそこから各PCにコピーし、個別に必要な点だけ手で設定するといったことが行なわれる。
ただし、そうしたPCをまったく同時に導入する場合だけでなく、数カ月などかけて順次導入することもある。また逆に、同時に大量に導入するために、同じ機種でもロットが揃わないこともある。
PCの同じ機種でも、ロット違いによってCPUやチップセットなどのリビジョンが違うこともある。すると、ドライバが違ってきて、同じマスターイメージが使えないことも起こりうる。その結果、情シスの手間が増えてしまう。
そうしたことを防ぐのがSIPP。最短でも15カ月間、または次世代のリリースまでの間、プラットフォームのハードウェアとドライバとして同じ構成が利用できることが保証される。
SIPPにより、同じドライバの利用が保証されるため、マスターイメージの種類を増やしたりする必要がなくなる。また、検証やアップデートの手間も少なくなる。そうした特徴によって、情シスの無駄な手間が省けるわけだ。
インテルvProプラットフォーム対応第13世代インテルCoreプロセッサー採用で優れた性能とセキュリティ性を両立
VersaPro タイプVD VD-Kはハイエンドモデルとして位置付けられていることもあって、高性能なプロセッサを搭載している。試用機の主な仕様は以下の表にまとめた通りだ。
プロセッサ | Core i7-1370P vPro |
---|---|
メモリ | 4GB(最大32GB) |
内蔵ストレージ | 256GB(最大1TB) PCIe SSD |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
ディスプレイ | 15.6型1,920×1,080ドットIPS非光沢液晶 |
無線LAN | Wi-Fi 6E |
Bluetooth | Bluetooth 5.3 |
キーボード | 日本語、キーピッチ約18.3mm、キーストローク約2.4mm、テンキー搭載 |
カメラ | 720P Webカメラ、プライバシーシャッター付き |
生体認証 | 顔認証IRカメラ、電源ボタン一体型指紋認証センサー |
インターフェイス | 電源コネクタ、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピン、HDMI、Thunderbolt 4、USB 3.0×1、USB 3.2×3、SDカードスロット、3.5mmオーディオジャック |
OS | Windows 11 Pro |
サイズ/重量 | 368.4×254×24.9mm/約2.2kg |
搭載CPUは、第13世代インテルCoreプロセッサーで、TDPが28Wの「P」プロセッサーを採用。薄型ノートPC向けの「U」プロセッサーよりも高い処理能力を発揮する。
近年は、プレゼン資料を作成する場合に、写真だけでなく動画を活用することが一般的となっている。動画編集作業は特に処理の重い作業だが、今回試用したPC-VKH52DZGKは、高性能コアのP-Coresを6コア、高効率コアのE-Coresを8コアの14コア搭載し、最大20スレッド処理に対応するCore i7-1370Pを搭載しており、動画編集などの作業もこなせる。下位モデルではCore i5-1350P搭載となるが、そちらも12コア/18スレッド処理対応で、ビジネスシーンで申し分ない処理能力を発揮する。
メモリは最大で32GBまで搭載可能。購入時のカスタマイズ次第となっているが、快適なハイブリッドワークへの対応を考えると最低でも16GBは搭載したい。
内蔵ストレージは、2.5インチHDDまたはPCIe M.2 SSDを搭載可能。試用機では容量256GBのPCIe M.2 SSDを搭載していた。作業の効率を考えると、HDDよりSSDを推奨する。
このほか、本体右側面に光学式ドライブを搭載可能。実際に試用機にはDVDスーパーマルチドライブを搭載していた。近年、光学式メディアを利用する機会は減少し、光学式ドライブを本体内蔵するノートPCも減少しているものの、データ保管などの用途で業務利用している企業もまだまだ存在しており、そういった要望にも対応可能となっている。
視認性に優れる15.6型フルHDディスプレイ
ディスプレイは、フルHD(1,920×1,080ドット)表示対応の15.6型液晶を搭載。サイズ、解像度ともにビジネス向けとして標準的で、実際に使っていて不満は感じない。15.6型だともう少し高解像度がいいのではと思う人もいるだろう、画面サイズの小さいモバイルノートPCと比べると、文字が大きいぶん見やすく、解像度も必要十分なので作業の快適度は申し分ない。
パネルの種類はIPSで、大きく視点を移動させても明るさや色合いの変化をほとんど感じない、広い視野角を確保している。表面は非光沢処理となっており、外光の映り込みはほとんど感じない。光沢液晶では、オフィスなどで天井の照明が写り込んで表示が見づらくなることもあるが、そういった心配が皆無なのもポイントが高い。
発色は、このクラスのノートPCのディスプレイとして標準的だ。写真や動画の編集作業も、本来の色をきちんと確認しながら行なえるので、こちらも不満はない。
また、ディスプレイ部は180度開閉し、水平まで開いて利用できる。たとえば、オフィス内での少人数の会議など、画面を水平まで倒して参加者全員から画面を見やすくできるので、便利に活用できるだろう。
キートップに傾斜を付けた扱いやすいキーボードを搭載
キーボードは、いわゆるアイソレーション型キーボードを搭載。テンキーも搭載しているので、数字入力も快適だ。オフィス利用のPCでは、テンキーの有無で作業効率が大きく変わるため、この点はありがたい。
主要キーのキーピッチは18.3mmと、フルピッチに近いがやや狭い。これはテンキーを搭載している影響。ただ、ほぼ全てのキーが均一のピッチで搭載していることもあり、一部キーだけのピッチを狭めたキーボードよりも圧倒的に扱いやすいと感じる。
キーストロークは2.4mmと、一般的な薄型ノートPCのキーボードよりもかなり深い。しっかりキーを押し込んでタイピングできる点は、デスクトップ用キーボードに近い印象。堅すぎず柔らかすぎずちょうどいい打鍵感と、やや強めにタイピングしてもキーボード面がたわまない強度と合わせて、かなりタイピングしやすい。
また、このキーボードの特徴となるのが、キーボード中心に向かってキートップに傾斜が付けられている点だ。斜めから見ると分かるが、キーボード奥側は中心に向かって手前傾斜、キーボード手前側は中心に向かって奥傾斜となっている。これは、デスクトップ用キーボードで見られるものだ。
一般的なアイソレーション型キーボードは、キートップがフラットで角度の付いていないものがほとんど。もちろん、それでも慣れれば快適なタイピングは可能だ。一方、VersaPro タイプVDのキーボードを操作してみると、キートップの傾斜によって、キーへの指あたりが断然快適という印象。指を動かした時のキーの位置をより正確に判断でき、より快適なタッチタイプが可能だった。これは、長時間タイピングを行なう人にとって大きな利点となるはずだ。
キーボードには防滴加工も施されている。キーボード底面に防水シートを配置するとともに、水を本体底面の穴から外に排出する構造を採用。これによって、万が一キーボードに水などをこぼしたとしても、本体内部への侵入を遅らせ、安全にシャットダウンする時間を稼ぐことが可能。これも堅牢性に加え、安全に利用できるという意味でうれしい仕様だ。
ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型タッチパッドを搭載。このタッチパッドは、本体サイズを考えるとそこまで大型ではないが、操作性自体は申し分ない。搭載位置がキーボードのホームポジション中心となっているため、その点でも扱いやすく感じる。
セキュリティ機能も充実
法人向けPCでは優れたセキュリティ性が欠かせないが、その点はVersaPro タイプVDも申し分ないものとなっている。先に紹介しているようにVersaPro タイプVDはインテルvProプラットフォーム対応のCPUを搭載。
そして、ソフトウェアからハードウェアまで、改ざんや不正アクセスを防ぐ、Microsoftが提唱するセキュリティ要件「Secured-Core PC」に対応。加えて、米国国立標準技術研究所が定めるセキュリティガイドライン「NIST SP800-147/155/193」に準拠するセキュリティ機能も搭載と抜かりがない。これにより、万が一BIOSやファームウェアが攻撃を受けても自己回復でき、優れた安全性を確保できる。
ユーザー目線でのセキュリティ機能としては、電源ボタン一体型の指紋認証センサーを標準搭載。また、Windows Hello対応の顔認証カメラも同時搭載でき、それらを使い分けられる。強固なログインパスワードを設定しても簡単にログインでき、セキュリティ性を利便性を両立できる。
さらに、オプションで顔認証ソフトウェア「NeoFace Monitor」も搭載可能。試用機には搭載していなかったが、NeoFace MonitorはNECの高精度な顔認証AIエンジンを搭載しており、マスク装着時でも顔認証を利用できるだけでなく、PC前の人の存在を検知して人がいなくなると自動で画面をロックするなどの機能が利用可能だ。
カメラには物理的にレンズを覆って利用不可にできるプライバシーシャッターを搭載。物理的に撮影不可にできるため、容易にプライバシーを確保できる。
このほか、右パームレストにFeliCa対応のNFCリーダーライターも搭載。こちらを利用することで、FeliCa搭載の社員証などを認証キーとして利用するといった運用も可能となっている。
こういった多岐にわたるセキュリティ機能を搭載しているため、幅広い業務で安心して利用できるのが本製品の特徴だ。
CPU処理能力を最大限引き出せる排熱構造
では、簡単にベンチマークテストの結果を紹介する。今回利用したベンチマークソフトは、UL LLCの「PCMark 10 v2.1.2636」、「3DMark Professional Edition v2.27.8160」、Maxonの「CINEBENCH R23.200」の3種類だ。
結果を見ると、いずれもかなり高いスコアが得られている。同じCPUを搭載するモバイルノートPCと比べてもスコアはかなり上回っていることに注目。これは、サイズを活かして大型のファンと冷却フィンを組み合わせた高い冷却能力のCPUクーラーを搭載することで、CPU性能が最大限引き出されているからだろう。
これだけのスコアが得られるなら、WordやOffice、Power Pointなどの通常業務で利用するアプリはもちろん、それらとWeb会議アプリを同時に利用する場合でも、動作の重さを感じることはない。もちろんフルHDクラスの動画編集などの作業も快適にこなせるはずだ。
CPUクーラーの騒音もそこまで大きなものではない。さすがに高負荷時には風切り音がしっかり耳に届くが、オフィスの通常の喧噪の中ではほぼかき消されるレベル。ゲーミングPCのようなうるささは全くないため、高性能でありながら周囲を気にせず利用できると考えていい。
続いてバッテリ駆動時間だ。VersaPro タイプVDはモバイル向けではないものの、現在の働き方ではある程度持ち運んで利用することも十分想定できるため、念のため計測してみた。
VersaPro タイプVDの公称の駆動時間は約8.2時間(JEITA測定法2.0)。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、ディスプレイのバックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測したところ、4時間47分を記録した。
さすがに長時間とはいえないものの、電源の取れない場所で1~2時間程度の会議を行なうといった場合なら十分対応可能だ。このクラスのノートPCとしては、駆動時間はまずまず満足できると言っていいだろう。
高性能でセキュリティ機能も万全なオフィスノートPCとして魅力的な存在
VersaPro タイプVDは、見た目こそ標準的なオフィスノートPCかもしれない。しかし、第13世代インテルCoreプロセッサーを採用することでハイエンドモデルらしい優れた性能を発揮するとともに、企業向けPCに求められる高度なセキュリティ機能もしっかり搭載。インテルvProプラットフォームにも対応しており、管理のしやすさも大きな魅力だ。
ハイブリッドワークが一般化したことで、オフィスPCにもかなり優れた性能が求められるようになっている。VersaPro タイプVDであれば、処理能力からセキュリティ機能はもちろん、ハイブリッドワークに対応する機能に至るまで、高いレベルでそれら要求に応えてくれる仕様を備えている。質実剛健のオフィスノートPCとして、圧倒的な魅力を備える製品だ。
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