PC Watchでは2月に「GPD WIN 4」のレビューをお届けした。ランドスケープ液晶を採用してゲーム互換性が高まっているほか、7型以上のUMPCと比較するとポータブル性にも優れた本機だが、レビューの際のベンチマークをTDP 23Wに設定した状態で計測していた。
今回、GPD本社より製品版に相当するWIN 4のホワイト筐体モデルのサンプルをお借りできたので、以前テストできなかったTDPの結果を“追試”するとともに、USB4にThunderbolt 3ドック「Node Titan」を接続し、ビデオカードにGeForce RTX 3070 Tiを載せて増設した際のベンチマーク結果をお届けしよう。
……とその前に、ホワイト筐体のモデルの実機はこれまで弊誌では紹介していなかったので、簡単に写真とともにお届けしたい。2月時点のサンプルと比較すると、背面のグリップ部にメッシュ処理が加えられ、滑りにくくなったのが印象。またL1/R1ボタンもクリアタイプから半透明タイプへと変わり、RGB LEDの光が柔らかく光るようになっているなど、ES提供から発売までのわずかな期間で改良が加えられているのが分かる。
一方、筐体のシェル部分こそホワイトになったが、コントローラのボタンや液晶のフレーム、キーボードのボタンは黒のまま。PSPのセラミック・ホワイトモデルはボタンまで白になっていたことを考えると、本機もすべて白に統一してもよかったのではとは思うが、これはこれでボタンの視認性が高いので、それまたよしといったところだ。
ピーク性能は28Wだが、ゲームやるなら23W設定も「アリ」
まずは消費電力(以降TDPとする)設定別の性能比較からだ。今回使用したベンチマークは「PCMark 10」、「Cinebench R23」、「3DMark」である。ちなみに競合の「ONEXPLAYER」と「AYANEO」シリーズでは、それぞれ「GAME CENTER」と「AYA Space」という純正ユーティリティを介して、RyzenのTDPの上限を設定するのだが、GPDは純正ユーティリティを用意しておらず、代わりにサードパーティー(というかFrank東氏個人)が開発した「Motion Assistant」というソフトを介して設定する(プリインストールされていた)。
このMotion Assistantは本来、ジャイロセンサーからの入力値をマウスカーソルの移動またはジョイスティックの操作などに変換するユーティリティだ。例えばジャイロ非対応のレーシングゲームでも、これを使えばジャイロを使ったハンドル操作が可能になるわけだが、その“オマケ”機能として、RyzenのTDPを調節できるようになっている(とは言え1つ目のタブがTDPなので、どっちがオマケなのかという話なのだが)。
プリセットは5/8/12/15/18/23/28Wという7つの選択肢があるのだが、今回は15/23/28Wの3つに絞ってテストしていく。
ということで、まずはPCMark 10の結果を見ていくと、28Wがトップパフォーマンスが出るのは当たり前だとして、23Wも健闘しているのが分かる。23Wは28Wに対して約12%程度消費電力が削減されているのだが、総合的な性能低下はせいぜい2~3%、多くて5%未満だ。一般用途において違いを感じることはまずないだろう。
その一方で15Wに設定すると、特にCPU/GPUを酷使するであろうDigital Content Creationの項目で大差がつき、11%強の差が生まれる。もっとも、消費電力にすれば46%減なので、電力効率的にはむしろ“爆上げ”されているわけだし、これでも一般用途にはまったく不満のない性能であることは明らかだ。
続けて純粋にCPU性能を計測するCinebench R23を見ていくと、Multi Coreの項目で28W→23Wの場合は、消費電力削減分相応の性能低下が見られる(消費電力で約12%、スコアでも約12%)。一方23W→15Wは性能低下幅が少ない(消費電力で約35%、スコアで約14%)。Ryzen 7 6800Uは、(今回比較した中では)TDP 15Wで最も高い電力性能比を実現できると言っていい。
一方でGPU性能が中心の3DMarkの結果を見ると、TDP 23W設定は28W設定から概ね5~6%程度の性能ロスだ。PCMark 10と比較するとスコアダウンは大きめだが、これはPCMarkが幾何平均を使って算出しているためだ。3DMarkは係数や比重こそあるものの、フレームレートから換算されており、スコア差にほぼ比例する。
例えば60fpsを達成できるゲームシーンの場合、56.4fps程度になるといった具合。カジュアルなゲームタイトルなら、この程度は許容範囲だというユーザーも多いだろう。少しでも発熱を抑えて静音にプレイしたいとか、バッテリ駆動時間を伸ばす目的なら、23W設定も十分“アリ”だと思われる。
USB4でも問題なくThunderbolt 3のGPUボックスが利用できる?
続いてはUSB4にThunderbolt 3の外付けGPUボックスを接続して利用してみた。Intel環境であればThunderbolt 3または4の正式対応が謳われていることが多いので、互換性は問題はないが、AMD環境はあくまでもThunderbolt 3と互換性のあるUSB4を搭載している、という立場だ。
しかしWIN 4に関して言えばこの心配は杞憂に終わった。つまり、Thunderbolt 3の外付けGPUボックスのNode Titan+GeForce RTX 3070 Tiは、繋げるだけであっさり動作したのである。
さらに言えば、WIN 4におけるNode Titanの動作安定性は、旧製品のWIN 3やWIN Maxなどと比較しても安定している印象だ。旧モデルは初回接続時こそ問題なく認識されるが、いったん取り外して2回めの接続を行なうとデバイスが使用できる空きリソースが不足しているといったメッセージが出たり、ブルースクリーンになったりする。大抵はGeForceドライバの再インストールで直ったりするのだが、WIN 4ではそのような問題はまったく発生しなかった(ちなみに個人的な予想だが、内蔵ランドスケープ液晶が関係している可能性がある)。
余談はさておき、改めてGeForce RTX 3070 Tiを接続した状態での3DMarkのベンチ結果を紹介するが、さすがに内蔵GPUと大きく差が開いた。例えばレイトレーシングを使うSpeed Wayでは7.5倍、DirectX 12対応で重めのTime Spyでも4倍程度といった具合だ。
一方、今となっては軽量なクラスに入るFire Strikeやもっとも軽負荷なWild Lifeではそこまでスコア差が開いていないのだが、これはGeForce RTX 3070 Tiで描画された画面をUSB4経由で本体内蔵の液晶に“書き戻し”をする際にバンド幅を消費するためで、フレームレートの足かせになってしまうため。試しにGeForce RTX 3070 Ti側のHDMIに別途モニターを付けて再度計測したところ、スコアの差が再び広がった。
もっとも、そもそも内蔵ディスプレイのリフレッシュレート上限は60Hzで解像度もフルHDなので、GeForce RTX 3070 Tiの性能は明らかにオーバーキル気味。しかし、応答速度を重要視するeスポーツタイトルをプレイする場合、WIN 4+外付けGPU+外付け液晶でプレイできるだけのポテンシャルはある、と言える。
ちなみにこのスコアを過去のGeForce RTX 3070 Tiレビュー時に使ったCore i9-10900Kの環境で得られたスコアと照らし合わせてみると、おおよそ8割強(Time Spy)~9割強(Fire Strike)といったところ。Ryzen 7 6800UとCore i9-10900Kの消費電力の違い、およびUSB4バスのボトルネックも考慮すると、今やモバイルCPUでも旧ハイエンドCPU環境に肉薄するハイエンド系のGPU性能を引き出せると言ってもいい。
TDPを抑えてもそこそこのゲーム性能が出せるという結果も踏まえると、この2年のCPUの進化は目覚ましいものだと、WIN 4で改めて思い知らされるのであった。
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