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Wednesday, June 3, 2020

口コミで知った健康食品 「効いた」を吟味する根拠とは:朝日新聞デジタル - https://ift.tt/2KYtf1P

知りたい民間療法(5)

 「口コミサイトで一番人気のサプリメントは効果も高いのですか?」

 「テレビで大学教授が紹介していたダイエットサプリは効きますか?」

 「『動物実験で、がん細胞が100%死滅した!』とテレビで紹介されていた治療を受けたい」

 これらは筆者が患者さんから相談を受けたことがある質問の一部です。健康食品に限らず医薬品においても、ある症状や病気に「効く」と言うためには裏付けが必要です。これを専門用語で科学的根拠(エビデンス)といいます。しかし、その科学的根拠は、情報としての信頼性が高いものから低いものまで混在しています。

 今回、健康食品などの補完代替療法(民間療法)の広告などでよく見かける口コミ(経験談)や専門家のコメント(権威者の意見)、あるいは細胞・動物実験に基づく報道記事について、情報としての信頼性を科学的な視点から吟味してみます。具体的には、その情報の信頼性を損なわせてしまう「偏り(バイアス)」や「偶然」の入り込む余地が、どれくらいあるのかを注意深く見極めていきます。(※「経験談」や「権威者の意見」に関する心理学的トリックについては、前回の記事(https://www.asahi.com/articles/ASN5L3VLBN5FUEHF001.html)も参照してください。

私に効いたら、あなたにも効くのか?

 膝(ひざ)が痛いという女性に、もう1人の女性が「このグルコサミンがお薦めよ」と紹介しています。いわゆる「口コミ(経験談)」です。

拡大する写真・図版知り合いからの口コミに潜む偏りを知っておきたい

 さて、人は過去の記憶を正確に覚えているでしょうか。ともすると、人は都合の良いことばかりを覚えていて、ときに記憶をすり替えてしまいます。これを専門用語で「思い出しバイアス(偏り)」といいます。

 例えば、症状の改善と健康食品の利用のタイミングは本当に一致していたか?健康食品以外にも薬や湿布は使っていなかったか?など重要な事実が忘れ去られていたり、誤って覚えてしまっていたりする可能性は否定できません。

 「飲んだ、治った、だから効いた」という<3た論法>にも注意が必要です。

 健康食品を利用したら、たまたま同じタイミングで症状が改善したのだとしたら?

 つまり、健康食品を利用しなくても症状は改善したかもしれない可能性があります。でも、人は、偶然起こった現象を、原因と結果という因果関係に結びつけてとらえてしまう傾向があります。

 口コミや経験談を「うそ」と断罪したいわけではなく、その情報には「偏り」や「偶然」の入り込む余地があるのだ、ということを覚えておいてもらえたらと思います。

大学教授、医学博士が言っていることは全て真実か?

 白衣を着た権威とされている人物が「ひざの痛みはグルコサミンで解消!」と言っています。大学教授や医学博士などの権威者も人間ですから、前述の「思い出しバイアス(偏り)」の入り込む可能性は十分にあります。

拡大する写真・図版白衣をまとった「権威者」の意見にも注意が必要

 さらに気をつけておきたいのは「利益相反」の問題です。もしかすると、イラストに出てきた健康食品の権威は、グルコサミンの会社から多額の出演料をこっそり受け取っているかもしれません。そうなると、都合の良い情報だけが表に出てきて、都合の悪い情報は隠されているような情報としての偏りが生じている可能性が否定しきれません。

動物に効いたら、人にも効く?

 「マウスの実験で、関節炎が改善」。なんとなく自分も使ってみようかな、という気がしてくるかもしれません。

 医学研究の細胞・動物実験は、必要不可欠で重要なことは間違いありませんが、そこで効果があったからといって、人で効果があるとは限りません。少し古いデータですが、経済産業省の資料(1)によると、薬の候補となる物質が見つかって、本当に薬になる確率は、約2万分の1とされています。ですから、「動物実験で効果が証明された。○○病への治療薬として期待される」という報道記事の「期待」は、「数百~数千分の1の確率」という意味であると捉えておく必要があります。

拡大する写真・図版動物実験の結果は慎重に聞いたほうがいい

 ここまでの内容を整理します。

 「経験談」「権威者の意見」「実験室の研究結果」は、科学的視点で吟味すると、偏り(バイアス)や偶然が入り込む余地が少なからずあるため、情報としての信頼性は低く見積もる必要があります。

 そのため、これらの情報が、治療方針を決めるときなど重要な意思決定の場面で判断材料として用いられることは基本的にありません。補完代替療法を利用するのかどうかの判断においても同様です。では、どのような情報であれば信頼性に足るといえるのでしょうか?

「効く」と言うための世界共通の基準

 医学・医療の領域では、情報の信頼性を判断する基準として、どのような方法で検証された情報なのかを確認しています。情報の信頼性が高いものから順番に並べたものが以下の表です。

 ここまで紹介してきた「経験談」「権威者の意見」「実験室の研究結果」は表の下の方(=情報の信頼性は“低い”)にあります。

拡大する写真・図版研究デザインによって、情報の信頼性の高さには違いがある

一方、最も信頼性が高いのは「ランダム化比較試験」となっています。

 これは、対象者をランダムに二つのグループに分けて、一方には評価しようとしている治療、もう片方には異なる治療(通常、現在行われている標準的な治療)を行い、一定期間後に評価しようとしている指標について比較検討する人を対象とした臨床試験です。

 医学・医療の基準で「効果がある(効く)」と言うためには、ランダム化比較試験で有効性が証明されている必要があります。これは、健康食品でも同じです。また、日本だけの特殊な考え方ではなく、世界共通の基準です。

 ですので、冒頭で紹介した患者さんからの質問への回答としては、「ランダム化比較試験で有効性が証明されていれば効きます」となります。あるいは「ランダム化比較試験での検証が行われていない場合、効くかどうかはわかりません」と説明せざるを得ないこともあります。

 次回は、健康食品をはじめとした補完代替療法に関するランダム化比較試験の報告はあるのか?、あるならば、どのような効果が証明されているのか?、について解説します。

[参考資料]

1)経済産業省技術戦略マップ2009「バイオテクノロジー:創薬・診断分野」(http://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/kenkyu_kaihatu/str2009/4_1.pdf別ウインドウで開きます

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