夜空に突然現れ、数週間から数カ月かけて星々の間を通り過ぎてゆく「彗星(すいせい)」。別名「ほうき星」とも呼ばれ、長い尾を引いた美しい姿は、多くの人の心を捉えてきました。まもなく地球に最接近するZTF(ズィーティーエフ)彗星は、肉眼で観察できる明るさになるかもしれないと注目されています。連載「星空と宇宙」、今回は彗星がテーマです。
彗星と聞いて、「ハレー彗星」を思い出す人は多いと思います。約75年ごとに太陽に接近し、紀元前から記録が残る最も古くから知られる彗星です。前回接近した1986年は、一大ブームとなりましたが、この時は地球との位置関係が悪く、明るさも4等級程度でした。次の接近は2061年で、前回よりも明るく観察できると予想されています。
いま接近中のZTF彗星は、22年3月に米国のパロマー天文台で発見されました。23年1月12日に太陽に最接近し、2月1~2日には地球に約4200万キロまで近づきます。2月上旬にかけて5等級程度の明るさになると予想されています。
ここ30年ほどの間にも大彗星がいくつか現れ、話題になってきました。1996年1月に彗星捜索家の百武裕司さん(故人)が発見した「百武彗星」は、発見約2カ月後に地球に大接近しました。私は北海道で見た、真夜中の空に数十度にもなる尾をなびかせて輝く姿が忘れられません。今まで見た中で最も印象に残る大彗星でした。97年4月には、巨大な核を持つヘール・ボップ彗星が太陽に接近してマイナス等級となりました。東京の街中でも、ふと見上げた夜空に彗星が輝く。なんとも不思議な光景でした。
「汚れた雪だるま」とも称される彗星は、主な成分が氷で、表面はちりや岩石に覆われているとみられています。太陽に近づくと熱で蒸発し、彗星本体(核)の表面から細かなちりやガスがまき散らされ、地球からは彗星の「尾」として観察されます。彗星が残したちりの中を地球が通過すると、地球の大気にちりが飛び込み、流れ星がたくさん見られます。これが流星群です。毎年10月に見られるオリオン座流星群は、ハレー彗星が残したちりが元になっています。
観測によって予測された通りの美しい姿を見せる彗星がある一方、予想ほど明るくならない彗星もあります。90年に太陽に近づいたオースチン彗星は、大彗星になると期待されながら3等ほどの明るさにとどまり、世界中の天文ファンは落胆しました。木星より遠い場所で発見され、巨大彗星だと注目されたアイソン彗星は、2013年の接近時、あまりにも太陽に近づいたため、核が崩壊し消滅してしまいました。
彗星が夜空に輝く光景は、まさに一期一会です。私は小学3年生の時、ハレー彗星を父と探しましたが見つけられませんでした。もし機会があれば、再び戻ってくるハレー彗星を見てみたいと思います。一方、今回のZTF彗星をはじめ、明るくなる彗星の多くは、二度と太陽に接近しないものや、再び近づくのが数千年~数万年先といったものがほとんどです。たった一度きり、短期間だけ現れる彗星に思いをはせながら眺めるのも良いのではないでしょうか。
観望メモ
彗星の明るさは点光源の星と違い、周辺の薄い部分を含めた全体の明るさです。同じ明るさの星と比べると、彗星はぼんやりした姿で見えるため、特に空が明るい場所や月明かりの中では、非常に見つけにくくなります。ZTF彗星も都会での観察は厳しく、空の暗い場所で双眼鏡があれば、見つけやすいでしょう。
ZTF彗星の位置は、1月30日ごろには北極星から10度ほど離れて、一晩中北の空に見えますが、毎日5度以上の速さで移動し、2月6日にはぎょしゃ座の1等星カペラに接近。2月11日にはおうし座に位置する火星に近づきます。2月6日が満月のため、月の位置との関係で、2月2日までは月が沈んでから夜明けまで、2月8日以降は、日没後から月が昇るまでが観望に向きます。実際に観察する場合は、インターネットや天文アプリなどで詳細な位置を確認することをおすすめします。【手塚耕一郎】
からの記事と詳細 ( 星空と宇宙:ZTF彗星まもなく最接近 一期一会の輝き放つ「ほうき星」の不思議 - 毎日新聞 )
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