東京大学と理化学研究所の共同研究チームは、矮新星(白色矮星と通常の恒星からなる近接連星系)である「SS Cyg(はくちょう座SS星)」の高速同時観測を実施し、可視光とX線の明るさの時間変動がほぼ同期していることを発見した。
同チームは、東京大学木曽シュミット望遠鏡に搭載された可視光動画カメラ「トモエ・ゴゼン(Tomo-e Gozen)」と国際宇宙ステーションに搭載された米航空宇宙局(NASA)のX線望遠鏡「ナイサー(NICER)」を用いて、SS Cygに対し、過去に例の無いサブ秒分解能の高速同時観測を2020年9月から11月にかけて実施。その結果、SS Cygの可視光とX線の明るさの時間変動に高い相関関係があることが、初めて発見された。
この現象は、SS Cygの白色矮星の近傍に分布する高温ガスから放射されるX線が、周囲の降着円盤や伴星を広く照らしているために引き起こされるという。過去のSS Cygの観測では可視光とX線の明るさの変動の相関は高くなかったため、今回の観測結果は、SS Cygの高温ガスの分布が最近になって幾何学的に厚く拡大し、周囲の降着円盤や伴星を広く照らせるようになったことを示唆している。
研究成果は、日本天文学会欧文誌(Publications of the Astronomical Society of Japan)オンライン版に5月17日付けで掲載された。可視光とX線のサブ秒分解能の高速同時観測という新たな観測手法により、光度変動の相関解析から降着円盤の幾何学構造に制限をつけられ、空間分解できない降着円盤の構造の解明につながることが期待される。
(中條)
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