コロナ禍で私たちの働き方が揺れている。感染防止のためにリモートワークで在宅勤務をする人とオフィスに出社する人が混在し、社内の風景が以前とは大きく様変わりしたという人も少なくないはずだ。
2020年は「リモートでも仕事ができる」という事実が、会社の規模を問わず多くの企業で浸透した年ともいえる。これに乗じてオフィスを縮小し、コスト削減を検討する企業も出てきているが、単なる拠点の縮小に留めるのではなく、オフィスの役割を見つめ直す絶好のチャンスではないだろうか。
そこで今回は、オカムラの研究部門でチーフリサーチャーを務める“働き方研究の第一人者”池田晃一さんに、ニューノーマルなオフィスの姿はどうあるべきかを聞いた。
正しいリモートワークの姿
オカムラはオフィス家具メーカーのイメージが強いが、実は働き方に関する研究も長年行っている。同社がより良く働くことを目指してオフィス総合研究所を立ち上げたのは1980年のことで、在宅ワークに関する実験は30年以上も前から取り組んでいる。
池田さんは2002年にオフィス研究所(当時)へ入所してから、研究職として仕事を続けてきた。仕事の時間や場所、内容、そして家事や育児、教育、介護といったワークライフバランスをどのように改善すれば、ビジネスパーソンが豊かな人生を送れるか、「柔軟な働き方」に関する研究を続けているという。
そんな池田さんは、コロナ禍で浸透したリモートワークの働き方が本来の柔軟な働き方とは異なっていると指摘する。
「自律的にオフィス以外の場所で働くのが本来の趣旨にあったリモートワークです。『強制的に家で働きなさい』とか『会社に出社するな』といわれてやるものではないのです」(池田さん)
コロナ禍では、多くの企業で半強制的にリモートワークへ移行した背景がある。このままリモートワークを正式に制度として取り入れ、恒久的な体制に移行しようと動いている企業もあるが、誤った認識のまま環境が構築されてしまうと、その後の働き方に悪影響を及ぼすかもしれない。そのうちの一つがオフィスの縮小問題だ。
オフィス縮小のメリットとデメリット
リモートワークで働く人が増えると、「これだけのワークスペースを保有するのは無駄ではないか」といった議論が生まれる。池田さんのもとにも「オフィスを縮小したい」という相談がよく持ちかけられるようになった。しかし池田さんは次のように話す。
「オフィススペースを減らすのは簡単ですが、これからの時代に向け、どのように変化させていくかが重要です。オフィスの機能をしっかり考えてから、余った分は縮小しようという発想が大事です」
チームの何人かが集まって業務を遂行するのであれば、チーム全員が集まれるような大会議室は必要ない。またリモートワークの導入が進むなら、大会議室を無くしたスペースにオンライン会議ができる複数の小さなブースを作るほうが便利だ。
池田さんの研究によると、大人数が集まって1つの大画面でオンライン会議を行うより、一人一人が違う端末で行う方がオンライン会議の質が高まるという結果になった。しかし、従来のオフィスには個人がオンライン会議できる環境が整っていないことが多い。これからのオフィス作りはこうした新しい視点が求められる。
また、リモートワークでは仕事に直結しないインフォーマルなコミュニケーションをとる頻度が著しく減少する。雑談はムダだと思われがちだが、思わぬヒントを得たり、人間関係を構築したりして、円滑に仕事をこなしていく土台になる資産だ。
「今まであまり重要だと考えられてこなかったカフェやラウンジ、社員食堂などを設けることで、リモートで働いている人がある程度の割合でいる状況でも、社内の風通しがよくなり、いろいろな人との出会いが生まれていい仕事ができる環境になるはずです」(池田さん)
こういった話でよく挙がるのは、固定席を設けない「フリーアドレス」という考え方だろう。座席が柔軟に変えられるという発想自体はいいが、運用に失敗している企業も多いと池田さんは指摘する。
「フリーアドレスで失敗する企業はコスト削減にしか目が行っていません。フリーアドレスは日本生まれの働き方ですが、本来は、自分の状況に合わせて効率的に場所を移動できるメリットを増やすというものです。『固定する席を廃止する』『床面積を減らす』ではなく、まずは『どうすれば人が効率よく、良好な関係性で仕事をこなせるか』を考えることが重要です」(池田さん)
オフィス環境作りを従業員に委ねてみる
企業では基本的にチームで業務を遂行することが多い。少人数の単位がいくつも作られて機能的に動いている会社は、そうしたユニットごとに分かれた組織から効率よく成果を生み出していくのかが重要になる。そこでポイントとなるのが、コミュニケーションの活性化だ。
「オカムラでは10年ほど前から『BUSHITSU』(部室)という、チームのための専用スペースをオフィスに備えることを推奨しています。そこに行けばチームの誰かがいる。出張に行った人のお土産が置いてある――チームのよりどころとなる空間を設けることで、コミュニケーションを活性化できます」(池田さん)
池田さんは、それぞれの部やチーム単位でスペースを作るだけでなく、どのように使うのか、チームメンバーが決められるようにすることがコミュニケーションの活性化に重要だと説く。そして、経営層は従業員が気兼ねなく働けるように雰囲気を盛り上げていくことが重要な課題といえる。
「会議室っぽくしたいとか、昼ごはんを食べられるようなスペースにしたいとか、チームが集まる場所をどのように構築していくか、上層部が口を挟むのではなく、現場の自分たちで作り上げるようにすることが重要です」(池田さん)
とはいえ企業は利益を上げることが重要なミッションである。経営層は仕事の成果にこだわってしまうのは当然だが、数字に表れない、仕事をする場所でのコミュニケーションに目を向けることも、リモートワークと出社のハイブリッドな環境では重要になる。また、仕事を通して一緒に成功体験をしたり、メンバーと苦楽を共にしたりすることで、感情報酬を得るのも組織として強くあるためには重要だという。
「各自に任せて組織が運営させると『怠ける』とか『ただダベっているだけになる』という心配をしがちです。しかし、仕事はオフィスのさまざまな空間でするものです。チームメンバーと、リモートでは得られない感情報酬が得られる空間を作ってはどうですか、とさまざまな企業に提案しています」(池田さん)
オカムラでは、これらに加えて社員のコミュニケーションを向上させるために映画部や読書部などの部活動を取り入れているという。組織はどうしても縦割りになりがちで、「面白い人が社の中にいるのに、それを知らないというのはもったいない」という発想だ。こうした活動により、横のコミュニケーションが活発となる他、他部署であっても、何かあったときに相談できるような関係性が構築できるといったメリットが生まれている。
「オフィスの休憩スペースに置いたデジタルサイネージで社員のプロフィールを写真付きで流しています。名前と部門と趣味を書いて流しっぱなしにすると、リアルで会ったときに話すきっかけができますよ」(池田さん)
日本HPのデバイスがオフィスをもっと柔軟にする
リモートワークで仕事ができるようになった今、オフィスに出社する価値をどのように見いだすか。そのために経営層は何ができるのか。単なる“オフィスの縮小”ではなく、本当に価値のあるワークスペース変革を考えるときが来ている。
そして池田さんが話したオフィス作りとあわせて、リモートワークと出社のハイブリッドな環境をつなぐためにITツールの活用は欠かせない要素の一つとなっている。特にビデオ会議ツールやコラボレーションツールの活用が必須になっている今、業務で使うPCに求められる性能や形も変化している。
例えば「リモートワーク前提ならノートPCを支給すべき」といった概念にとらわれていないだろうか。リモートワークでは業務の実作業からコミュニケーションまで、ほぼ全ての作業をPC上で完結させることになる。つまり、わずかなパフォーマンスの差が生産性に直結する。
そこで日本HPが提案しているうちの一つが、持ち歩ける超小型デスクトップPCの活用だ。同社の「HP EliteDesk 800 G6 DM」は、容量わずか1リットルの超小型筐体に、パフォーマンスと高いセキュリティ機能を詰め込んでいる。
オフィスと自宅を行き来する内勤型のビジネスパーソンであれば、画面サイズが大きいディスプレイやマウス、キーボード、電源アダプターなどをそれぞれの場所に用意しておき、PC本体を持ち歩くという使い方だ。余裕のあるマシンスペックと、表示領域の広いディスプレイなどの周辺機器と組み合わせることで、自宅とオフィスどちらでも、生産性の高い環境を構築できるようになる。
一方、今後も自宅やオフィス以外の場所で作業することが多いビジネスパーソンなら、本体重量が1kg未満の筐体に最新のAMDプロセッサ、最大23時間のバッテリー駆動、どこでもネットワークに接続できる4G LTE、そして強力なセキュリティ機能を詰め込んだ「HP ProBook 635 Aero G7」をはじめとするモバイルノートPCという選択が適している。
本当の意味での働き方改革はまさにこれからだ。会社にとってプラスになるオフィス改革を進めるにあたり、重要なIT環境の見直しを検討しているなら、豊富な商品ラインアップを提案できる日本HPに相談してみてはいかがだろうか。
関連リンク
からの記事と詳細 ( 在宅と出社のハイブリッド時代、どうするオフィスの存在価値 “オフィス作りのプロ”オカムラに聞いてみた - ITmedia )
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