日本学術会議の会員改選で、推薦された105人の候補者のうち、菅義偉首相は6人を任命しなかった。学問の自由を脅かす異例の政治介入に対して批判が高まっている。排除された一人、松宮孝明・立命館大教授(刑事法学)は「学者をなめ、学術会議をこけにした」と憤り、「この介入を押し返さないと、歯止めがきかなくなる」と早期の撤回を求めている。【栗原俊雄】
--任命されなかったことを知った時、どう思いましたか。
◆日本学術会議の事務局から電話で伝えられましたが、まず驚きました。まったく予想していなかったので。少し冷静になって思ったのは、「えらいことをやってきたな」と。人事に手をつけてきたのは官邸の人たちでしょう。まず法律が分かっていない。日本学術会議法第7条と17条では、会員の選び方について、学術会議の推薦に基づき内閣総理大臣が任命する、と定めています。推薦に基づかない任命を首相がすることはできません。また推薦された人を任命しない場合は、合理的な理由が必要です。たとえば研究不正など。しかし今回はこれには当たりません。
1983年の参院文教委員会で中曽根康弘首相(当時)が「実態は各学会が推薦権を握っている。政府の行為は形式的」と述べています。これは学問の自由を保障する、日本国憲法23条に基づいている。今回の政府による人事介入は、そういう法体系が分かっていない人の判断だと思いました。学術会議の事務局の人と「これは大変なことになりますね」と話しました。
--同法7条は「学術会議は210人の会員で組織する」と定めています。
◆ええ。政府の判断で勝手に変えられるものではありません。学者は理不尽なことを言われて、「はいはい分かりました」と言うことは聞きません。学者と学術会議をなめていたんでしょう。
--菅義偉首相は2日、日本学術会議の人事について「法に基づいて適切に対応した結果」と述べました。しかし任命しなかった具体的な理由を説明していません。
◆説明しないというより、できないのでしょうね。推薦の基準は各分野の学問的…
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