大阪都構想は、大阪市を廃止し財源の多くをいったん大阪府に移す一方、新たに設置する特別区が教育や福祉、医療などの住民に近い行政サービスを実施するという大都市制度改革だ。
2度目の住民投票で賛否を問う制度案は、前回の基本的な理念を踏襲し、2017年6月~20年9月の計37回に及ぶ法定協議会の議論を経て修正された。大阪維新代表の松井一郎市長は「前回よりもバージョンアップされた協定書(制度案)になった」と強調する。
大きな変更点は24行政区の区割りで、5区だった特別区の数を「淀川」「北」「中央」「天王寺」の4区に分割。前回は34万~69万人と大きな人口差があったが、今回は60万~75万人で、人口や区税収入の格差がなるべく出ないように配慮された。
公明党は都構想賛成に方針を転換する際、①特別区設置コストの抑制②住民サービスの維持③各特別区に児童相談所を設置④窓口サービスの維持――の4条件を求め、維新はほぼ受け入れた。
特別区設置に必要な初期コストは、各特別区の新庁舎を建設せずに現在の市役所や区役所を活用することで、前回の600億円から240億円に大幅に縮小された。現在の市役所本庁舎は新北区が本庁舎として使用するが、新淀川と新天王寺の両区の本庁舎に入りきらない職員計約1450人も空いているスペースに「間借り」することになる。
松井市長は合同庁舎案について「他の自治体同士が一つの場所にいれば緊密に連携でき、情報共有できる」とメリットを強調する。しかし、自民党は「独立した自治体の職員の多くが別の(区域外の)自治体で働くのは、全国でも離島など一部の特例しかない。庁舎整備はいずれ必要になり、コスト削減ではなく先送りだ。危機管理を真面目に考えているのか疑う」と批判している。
財政面では「住民サービスの維持」を後押しするため、府は制度が移行する25年から10年間にわたり計約370億円を特別区に分配する。公明党は「大阪市のままでも、未来永劫(えいごう)今のサービスが維持されるという保証はない。『サービスの維持』を協定書に盛り込んだのは大きな意味がある」と主張する。
だが共産党は「住民サービスの維持が約束されているのは制度移行時まで」と指摘し、「人件費などが増えるため、将来的にはサービスが打ち切られる可能性が高い」と訴えている。
特別区の財政運営が成り立つのかという点も賛否を分ける焦点になりそうだ。
府と市は25年度から15年間、特別区の財政運営が成り立つとする財政シミュレーションを示す。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で21年度の市税収入(予算ベース)での7%に相当する約500億円が減少する見通しで、市が株式を100%保有する大阪メトロの配当も大幅に減少するが、こうした影響は試算に組み込まれていない。
松井市長は「コロナの影響は特殊事情で、短期的なもの。市税が不足しても交付税制度で国から補塡(ほてん)されるので心配ない」と主張する。
これに対し、自民党は「国からの補塡はあてにできない。メトロの配当頼みの財政運営は危険すぎる」と指摘し、共産党は「大阪市を潰すためのお金やエネルギーを新型コロナ対策に使うべきだ」と訴えている。【野田樹、田畠広景】
からの記事と詳細
https://ift.tt/36W5xla
日本
No comments:
Post a Comment