スイッチの快進撃が続く任天堂
家庭用ゲーム機市場に乗り出して以来、任天堂は長きにわたって業界を牽引してきました。その勢いは今もなお増すばかりで、時価総額が10兆円を超えたとの報道が先日広がったばかり。飛ぶ鳥を落とすような好調ぶりは、疑う余地もないほどです。
任天堂の飛躍は、今なお高い関心を集めるNintendo Switch(以下、スイッチ)の活躍抜きには語れません。これまで任天堂は数々の名機を生み出してきましたが、そのなかでもスイッチは指折りの人気を誇っています。
スイッチの躍進は、歴代ゲーム機の歴史と照らし合わせても「異変」と呼べるほどの展開を迎えています。絶好調の任天堂を支えるスイッチが、どんな歩みと結果を積み上げているのか。任天堂が公開した、2024年3月期第2四半期決算説明会兼経営方針説明会のデータを元に、その「異変」に迫ります。
●一般的なサイクルを超え、なおも好調なスイッチ
任天堂に限らず、家庭用向けのゲーム機を代々出し続けているメーカーは、一般的に5〜6年ほどのサイクルで新型機を投入します。同社の場合、スーパーファミコンの6年後にNINTENDO64を発売、その後も5年後にゲームキューブ、さらにまた5年後にWiiを発売しました。
身近なところでは、スマホの代替わりで実感している人も多いと思いますが、時間が経つほどソフトウェアが求めるスペックは上がっていき、発売済みの機器ではいずれ物足りなくなります。そうした不満を解消するには、新型機を出すのが最も分かりやすい解決の手段です。また任天堂の場合は、ゲーム機によって特徴が変わる場合も多く、新たなゲーム体験の提案として新型機を出すといった側面もあります。
ですが、Wii Uからバトンを受け取ったスイッチが発売されたのは、2017年3月のこと。すでに6年が経過していますし、現段階で新型機の発表がない以上、2か月後に現役7周年を迎えるのは間違いないでしょう。
これほど長い間第一線を走り続けるゲーム機は、皆無でこそありませんが、非常に稀有なのは確か。ですが、こうした現状もスイッチの普及度を考えれば納得できます。スイッチファミリーの累計販売台数は、驚異の1億3000万台超え。ソフトウェアの累計販売本数も11億3000万本を突破しています。
ゲーム機の勢いは中期がもっとも伸び、以降は右肩下がりになりがちです。しかしスイッチの場合、任天堂がリリースしたゲームソフトの販売規模は今も高い水準で推移しており、最も多かった2020年に続き、2023年は歴代2位を記録しました(※スイッチ発売後の2017年〜2023年の各4月〜9月期を比較)。
同時期の一昨年(2021年)や昨年(2022年)を上回り、2度目の右肩上がりを記録しているこの売れ行きは、「異変」と表現しても過言ではないでしょう。
『ゼルダの伝説』や『マリオカート』がスイッチでさらに躍進
●人気シリーズは、スイッチ世代でさらなる飛躍を遂げる
総数だけではイメージが掴みにくいかと思うので、具体的な例を挙げます。2006年に発売された『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』は、これまでに750万本を売り上げました。言うまでもなく、文句のつけようがないほどの大ヒットです。
しかし、スイッチと同日(2017年3月3日)に発売された『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、累計で3115万本もの販売本数を叩き出し、本シリーズ最高の記録を刻みました。『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』と比べ、なんと4倍以上の伸びです。
加えて、その続編として2023年5月12日にリリースされた『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』も1950万本を販売しており、こちらも1000万本のラインを軽く突破しました。
ちなみに、続編で数字が大きく下がっているようにも見えますが、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は6年以上の月日をかけて積み上げた結果です。一方『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、発売から半年足らずのデータなので、単純に数字だけを比べるのはナンセンスでしょう。むしろ、短期間でここまで売り上げた勢いに驚くほかありません。
また、スイッチ世代で急激に伸びたのは『ゼルダの伝説』だけではありません。Wii U向けに登場した『マリオカート8』は846万本ですが、スイッチ版の『マリオカート8 デラックス』は5701万本を超えており、スイッチ史上最も売れたゲームとして名を馳せています。
『ゼルダの伝説』や『マリオカート』は、元々高い人気を誇るシリーズですが、過去の作品と比べても、スイッチ世代の各タイトルが大幅に伸びていることが分かります。特に『マリオカート8 デラックス』は、完全新作ではなくパワーアップ版とも言うべきソフトなのに、それが5000万本を超えるのは驚愕の一言です。スイッチ世代で見えた人気作の伸びは、まさしく「異変」なほどです。
●世界規模で順調なスイッチ。この勢いを受けて、任天堂はどう動くのか
一般的なゲーム機の現役期間を超えながら、前年や前々年を超える右肩上がりで伸び、人気作もさらに飛躍していく。そんな異変続きのスイッチを後押しした理由のひとつは、日米欧以外の市場が活性化しているためです。
かつては、日本市場はもちろん、人口の多いアメリカ市場、広く展開できるヨーロッパ市場が中心的で、スイッチ発売時の2017年3月期の時点では、この3市場以外の売上高の合計は249億円程度でした。しかし2023年3月期には、4倍を超える1387億円まで伸びており、アジアやオセアニアといった日欧米以外の市場もスイッチの躍進に大きく貢献します。
こうした広がりも手伝い、ニンテンドーアカウントの数は3億3000万アカウントを超えており、有料サービスの「Nintendo Switch Online」会員も3800万アカウントを突破。直近1年の年間プレイユーザー数も1億1700万以上を数え、スイッチが今も現役であることがデータからも窺えます。
スイッチは今年の3月3日で7周年を迎えるため、8年目への突入が秒読み態勢となりました。異変づくしの活躍ぶりはもちろん喜ばしい話ですが、この好評が後継機の登場を遅らせる一因となる可能性もゼロではありません。
スイッチフィーバーが長く続き過ぎて、次世代で遅れを取ってしまう──そんな展開は、任天堂も避けたいはず。しかし、後継機を発表してスイッチの勢いに水を差してしまうのも考えもの。実に悩ましいところです。
スイッチが好調なうちはこの路線を継続するのか、この勢いを後継機に繋げる一手を打つのか。2024年の任天堂の動きが、今後5年〜10年のゲーム業界を大きく左右するかもしれません。
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