土星には現時点で146個の衛星があり、そのうちの1つが氷衛星のエンケラドゥスです。そんな衛星の潜在的な居住可能性を示唆する証拠が、さらに見つかったといううれしいニュースが届きました。
生命が存在する可能性が高い「エンケラドゥス」
エンケラドゥスは小さな衛星ですが、太陽系の中でも生命を育む可能性が最も高い場所の1つです。同衛星は生命に欠かせない材料である有機化合物を噴出しており、長年の研究を通してこの主張を裏打ちするデータは十分に蓄積されてきました。
そして今回、生命の起源の鍵となる分子と化学エネルギーの源の有力な証拠が発見され、科学者たちがエンケラドゥスに肩入れしたくなる理由が増えました。チームの研究成果は、Nature Astronomyに掲載されています。
カッシーニからのデータを解析
研究者たちのチームはNASAの土星探査機カッシーニが収集したデータを使って、エンケラドゥスにシアン化水素が存在することを確認。ハーバード大学の博士課程の学生で、この最新研究の筆頭著者であるJonah Peter氏はNASAのリリースにこんなコメントを寄せていました。
「シアン化水素は生命の起源に関するほとんどの学説の出発点なので、その発見にはとても興奮しました」
直線分子(原子の直線上の配列)であるシアン化水素は、隕石経由で地球に届き、化学反応によってアミノ酸の形成に寄与したと考えられています。
この最新研究は、エンケラドゥスの内部海が化学エネルギーの源を有する可能性も示唆しています。内部海は同衛星を覆う氷の表面の下に広がっており、そこから有機分子が豊富な水蒸気のプルームが噴き上がっています。
注目される内部海とプルーム
土星を周回した探査機カッシーニは、20年間に及ぶミッションの中でエンケラドゥスを観測し、その氷でできた地表の割れ目から噴出する巨大な水のプルームを捉えました。カッシーニはそんなプルームの中を通り抜けてアミノ酸、リンなどの有機化合物も検出しています。
今回の研究は、エンケラドゥスにはこれまで考えられていたよりも多くの化学エネルギーがあると示唆しており、この小さな衛星に生命が誕生し維持できるという可能性は高まります。
「私たちの研究は、エンケラドゥスには生命の構成要素の形成と代謝反応によるその生命の維持にとって最も重要な分子が存在するというさらなる証拠を提供するものです」
とPeter氏。
エンケラドゥスが放出したプルームから検出された二酸化炭素、メタン、水素の組み合わせからは、メタンを生み出す代謝プロセスである「メタン生成」が示唆されます。そのプロセスは、地上の生命の起源においても極めて重要だった可能性があります。
「エネルギーという意味において、メタン生成がいわば小さな腕時計の電池のようなものなら、我々の成果が示唆するのはエンケラドゥスの海が、そこに存在する可能性があるどんな生命にも大量のエネルギーを供給できる車のバッテリーのようなものを提供するのかもしれないということ」
と研究の共著者で、NASAのジェット推進研究所で新しい成果の主任研究員Kevin Hand氏は前述のリリースで語っていました。
カッシーニのミッションは、2017年に土星に飛び込んで有終の美を飾りましたが、収集されたデータは新たな発見をもたらし続ける贈り物です。
今回の成果はエンケラドゥスに生命が存在することの証明というわけではありませんが、この氷衛星に生命を育み維持できる化学経路がある可能性を示唆するもの。今後の探査に、ますます期待が高まりますね!
Source: Nature Astronomy, NASA JPL,
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