プッシュ通知を素早く確認したい、あるいは運動量をしっかり計測したい。スマートウォッチはそんなニーズを満たす製品として、認知度が拡大しています。かのGoogleも2022年から自社ブランドで市場に参入。この10月には第2世代モデル「Pixel Watch 2」の発売を開始しました。
新モデルのどこに注目すべきか? 初代モデルを1年間バッチリ使い込んだ筆者が解説します。
バッテリー駆動時間改善 盤面の常時表示や睡眠時間測定が実用的に!
今回Pixel Watch 2を試用してみて、初代から大きく改善したと感じるのがバッテリー駆動時間です。スペック表を見ても、前述の通り、バッテリー容量が若干アップしていますし、新チップセット「Snapdragon Wear 5100」が採用された影響も大きそう。ソフトウェアの内部的な改修も進んでいることでしょう。
体感値としての駆動時間が長くなった意義は大きく、結果的に装着→充電→装着……という、日々のスマートウォッチ利用サイクルにも良い影響を与えています。
まず前提として、筆者のPixel Watchの使い方を説明させてください。モデルは言うまでもなく初代Pixel Watchですが、これを「起床したと同時に装着→日中利用→入浴時に外して充電開始→そのまま装着にせず就寝→起床してまた装着→以後繰り返し」というサイクルで使っています。就寝中に装着していませんから当然、Pixel Watchが本来対応している「睡眠時間計測」を、利用していないことになります。
これはなぜかというと、充電が1日1回で済むからです。「そりゃ、そうでしょ」という声が聞こえてきそうですが、日中の運動量計測を問題なくこなしつつ、このサイクルで睡眠時間測定を追加するとすると、起床時にもう一度充電しないといけない。朝に充電しないままでは、とてもではないが安心して夜まで外出できないのです。
朝はなんだかんだでバタバタしてますから、そのタイミングで充電などしたくないというの本音。つまり、1日2回充電して運動量測定(日中)と睡眠時間(夜間)を両立させるくらいなら、1日1回の充電にして睡眠関連は諦める──。これが初代Pixel Watchに対する、筆者の偽らざる結論です。運動といえばウォーキングが主体の筆者ですらコレですから、本格的にジョギングする方だともっとバッテリーへの要求は厳しいのではないでしょうか。
これに対してPixel Watch 2では、入浴中に満充電にしておき、就寝時に装着、それから約6~7時間後に起きてもバッテリーが80~85%程度残っているケースが大半でした(おろし立ての新品による試用という点は考慮しなければなりませんが)。これであれば起床時の充電しなくても、1日なんとか運用できるレベルになってきます
そしてもう1つ、初代Pixel Watchで機能的に実装されてはいながらも、バッテリーの都合で諦めていたのが、時計盤面の「常時表示」です。
時間を確認するために腕を上げたときだけ、センサーがそれを感知して画面を表示、腕を下ろすと消灯する。これが、多くのカラー液晶式スマートウォッチに共通する挙動でした。バッテリー消費量を抑えるための、ある意味当然の工夫です。ただし、常時表示できれば、センサーが感知しないような姿勢・タイミングでも時間を確認できるので、表示できるならそれはそれで便利。例えば机に向かってペンを動かしている時、左手は動かさずに時計を覗きこむだけで、ことは済みます。
Pixel WatchシリーズをはじめとするWear OSや、その前身のAndroid Wearを採用するモデルでは、腕の位置にかかわらず盤面を常時表示させるかどうか、オプションで選択できるケースが大半でした。ただしバッテリー駆動時間を優先させようとすると、常時表示オプションはオフにせざるを得ない。それもまた現実だったように思います。
ところがPixel Watch 2では、初期セットアップの段階で「常に画面をON」の設定が有効化されており、ここからも常時表示の実用性に関する開発者の自信を感じます。実際、常時表示にしても、バッテリーの減り方は、緩やかな印象。おおまかにいって、6時間で30%ほど減少するイメージです。仮に起床時の残量が85%だとすると、12時間外出しても20~25%は残る計算になります。
なお常時点灯とはいっても、盤面を見ていない状態では画面の明るさが抑えられ、アナログ盤面における秒針表示も省略されます。言わば“バッテリー節約表示”のモードで、通常表示、画面消灯とはまた異なる動作モード、という位置付けです。Wear OSにおける画面の常時表示とは、この3つのモードのうち、通常表示とバッテリー節約表示を使うもの、と理解しておくとよいでしょう。
Googleは「常に表示状態のディスプレイで24時間使用できる」とアピールしていて、実際その水準は確保されていると思います。ただ「バッテリー残量を気にせず安心して使えるか」というと、それはやや微妙でしょう。特に、常時表示のバッテリー消費にはさらなる改善を期待します。筆者がPixel Watch 2を常用するなら「入浴中に充電して睡眠時間はしっかり計測。朝の充電はせず、ただし常時表示はオフ」というかたちをとるつもりです。
「Fitbit」アプリが運動量・身体ステータス計測の中核を担う
Pixel Watch 2では、フィットネス関連機能の大幅強化がアピールされています。その中核を担うのが「Fitbit」アプリです。Pixel Watch 2の心拍センサーやモーションセンサーで運動量を測り、それらの値をおもにスマートフォンアプリで管理する。これが基本の流れであり、Pixel Watchが高機能であればその分、精度アップや、収集項目の増加が期待できます。
Pixel Watch 2で新たに計測できるようになったのが、皮膚温の計測です。就寝中にPixel Watch 2を装着している際に計測が行なわれ、睡眠の質などに関する情報判定に用いられるそうです。
ただし、これらの睡眠に関するデータ提供は、ある程度の期間のデータ蓄積があってはじめて有効になるとのこと。例えば「睡眠プロフィール」は1カ月のうちに14日間、皮膚温表示には最低3日間の計測が必要です。今回の試用期間中では、どちらの条件も満たせなかったため、詳しい言及は避けますが、中長期的に計測し続けることで色々な気付きがありそうです。
ちなみに以下の画像は、とある1日の就寝パターン計測を、初代Pixel Watchで計測した際のデータになります。レム睡眠や深い睡眠の割合が実時間表示されるだけでなく、100点満点でスコア化されたりと、睡眠の可視化がとにかく楽しくなるよう工夫されていることが、お分かりいただけるでしょう。
もう1つ付け加えるなら、Fitbitで睡眠関連の指標をしっかり確認したいとなると、有料の「Fitbit Premium」(月額640円から)を契約しなければなりません。Pixel Watch購入者には半年間の無料体験制度が用意されているので、その期間中にしっかり機能を見極めましょう。
なお、筆者が初代Pixel Watchで睡眠時間を計測しないのは、前述の通りバッテリーに関する不安がまず大きくありますが、この有料サブスク代を節約したい気持ちがあることも告白しておきます。
運動量の可視化という意味では、歩数、移動距離、心拍数を考慮しての消費カロリー量などが日々蓄積されています。Pixel Watch 2装着中はほぼ常時心拍数が計測されていますが、これはスマートフォン単体動作式のフィットネスアプリでは実現してない機能。安静時心拍数の平均値や変動幅表示は、スマートウォッチ初心者にはかなり新鮮でしょう。
一方で、明確に不満なのが外部フィットネスアプリとの連携です。筆者は仏・Withings社のWi-Fi体重計で1日2回、体重を測定しています。このデータはGoogleのもう1つのフィットネスアプリである「Google Fit」と自動連携させることができました。よってGoogle Fitアプリさえ開けば、運動量も体重も一度に確認できたのです。
現在、フィットネスデータをAndroidデバイス間でやりとりするためのプラットフォームは、Google Fitから「ヘルスコネクト」へ移行しつつあります。この刷新によって機能向上が期待できるところですが、しかし未だにFitbitアプリでは、ヘルスコネクトに流し込んだ体重データを反映・表示させることができていません。Withingsのアプリはヘルスコネクト対応しているにも関わらず、です。ここはもう本当に早く改善していただきたい!
ペアリング先を変更する際、リセット要らずになった!
Pixel Watch 2でもう1つビックリしたのが、ついにペアリング先の“移行”ができるようになったことです。
Wear OSスマートウォッチを1度でもお使いの方ならご存じでしょうが、ペアリングするAndroid端末を変更するには、必ずスマートウォッチをリセットしなければなりませんでした。
もちろん、多くのデータはスマートフォン側に保存されていたり、クラウドにアップロードされているので、再セットアップの実害は少なめです。しかし、とにかく手間はかかる。Googleアカウントにログインしなおさないといけなかったり、チュートリアルのやり直しだったり、細々とした作業が発生してしまうのです。
それがWear OS 4.0が搭載されたPixel Watch 2では、設定メニュー内に「移行」の項目があります。これを実行した後、新しいペアリング先となるスマートフォン側のPixel Watchで初期セットアップ操作を実行すると、リセットなしにそのままスムーズに移行できるのです。
今回筆者が試した範囲では、移行によってSMS送信などに使う「メッセージ」アプリの挙動がややおかしくなりました。個別のアプリでログインしているアカウントが異なっているとか、電話番号と紐付いたメッセージアプリなどではトラブルが発生する可能性は高そうです。
ただ、PINコードを再登録したりタイル再配置の手間を軽減できたのも確か。なにより手順が簡単なので、「なんでもっと早く実装してくれなかったんだ!」と叫びたくなるくらいでした。
現段階では、もしかすると素直にリセットして再ペアリング、のほうが動作確実性は高いかも知れません。ですが長期的には、初代Pixel Watchをはじめとする多くのWear OSスマートウォッチでサポートして頂きたい機能です。
秒表示できるデジタル盤面が相変わらず少ない
時計の盤面をアナログにするかデジタルにするか、表示色はどうするか、オプション項目で天気を表示するのかバッテリー残量を表示するのか。Pixel Watchでは、こうした見た目のカスタマイズができます。
この「ウォッチフェイス」機能、標準で20種類以上のデザインカテゴリーが用意されていて、かつ色の組み合わせができるため、ほぼ無限に近いカスタマイズができます。
しかし! これだけ種類があるにも関わらず、「秒」の表示ができるデジタル式盤面デザインは、ほぼありません。これは初代Pixel Watch、Pixel Watch 2に共通する傾向で、筆者が確認する限り、標準提供されているデザインの中では皆無。秒表示できるのはすべてアナログ式の秒針に限られます。
秒ごとの画面書き換えで想像以上にバッテリーを食うとか、一応理由は想像できます。しかし、「Outlook」アプリをインストールしたときにだけ使える限定ウォッチフェイスではデジタル式でも秒表示していますし、全く無理ではなさそう。もう少しなんとかならないものでしょうか。
Androidでスマートウォッチには最有力候補 買い替えは悩ましい
以上、Pixel Watch 2について、初代モデルユーザーの立場から色々チェックしてみました。今回はあまり触れませんでしたが、引き続きおサイフケータイにも対応していますので、モバイルSuicaを登録すれば電車に乗るのもOK。個人的には、前払式の乗合バスに乗る際だったり(左腕に付けている場合、体制的にも苦しくなくてちょうどよい)、自販機で飲み物を買う場合に重宝しています。普段はスマートフォンのおサイフケータイをメインに使い、Pixel Watchのほうは万一の保険、という位置付けですね。
本稿の結論ですが、「普段Androidスマートフォンを使っていて、そろそろスマートウォッチを使いたくなった」という方には、間違いなくPixel Watch 2がオススメです。少しずつですが対応アプリは増えていますし、Pixel Watchが世代を重ねていく中で、アプリ開発企業側のWear OS対応もドンドン進むはず。充電アダプターの互換性なども考慮すると、初代モデルをあえて選ぶ必要性は薄いと言えます。
ただ、価格は気になります。初代モデルは39,800円(Wi-FiモデルのGoogleストア販売価格)からだったところ、Pixel Watch 2は51,800円からと、このところの円安傾向がモロに反映されたかたちで値上げとなっています。キャンペーンなどで初代モデルが廉価になる可能性もありますが、それでもやはり2を選ぶべきというのが筆者の意見です。
初代モデルから2へ買い替えるべきか。これも非常に悩みどころです。センサー性能の向上なども図られていますが、やはり中心となるのはバッテリー性能をどう考えるか、でしょう。
繰り返しになりますが、バッテリー駆動時間の長時間化は今回のレビューでも体感できた部分で、実際のところ大きな魅力だと言えます。しかし初代モデルを使い込んでいる方は、機能とバッテリーのちょうどバランスの良いところを自分なりに見出しているはず。であるならば、故障などがない限り、初代モデルを使い続ける選択肢が、あって然るべきです。積極的な買い替えをオススメできる層がいるとするなら、「睡眠計測も常時表示も、とにかく沢山の機能を使いまくりたい」という方になるでしょうか。
運動量を計測したからといって、それだけで健康になるわけではありません。しかし、さまざまな統計が数値として現に提示される楽しさは、スマートウォッチならでは。未体験の方は是非一度店頭などで実機に触れてみては?
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