ポータブルゲーミングPCが今アツい。各社から意欲的なデバイスが数多く登場しているが、中でも注目されているのが6月に発売されたばかりのASUS「ROG Ally」(アールオージー エイライ)だ。 ROG AllyはポータブルゲーミングPCの中でもトップクラスの性能を備えながら、上位モデルで約11万円という手頃な価格を実現しているのが人気の理由だ。
そこで今回は、軽量級~重量級まで30タイトル以上のゲームを用意し、ゲームをどこまで快適にプレイできるのか、徹底的に検証してみた。また、描画負荷の高い重量級ゲームをプレイするためのコツも合わせて紹介するので、購入を迷っているならぜひともチェックしてほしい。
高性能な「Ryzen Z1 Extreme」を搭載
今回は、APU(CPUとGPUを統合したもの)にRyzen Z1 Extremeを採用する上位モデルを使って検証する。まずは、スペックを紹介しておこう。
Ryzen Z1 Extremeは、CPUにAMD最新アーキテクチャの「Zen 4」をベースにした8コア16スレッドで最大5.1GHz駆動という高スペックなものを採用。GPUにも最新世代の「RDNA 3」をベースにした演算ユニット(CU)を12基備えるRadeon Graphics(最大8.6TFLOPS)を搭載と、強力なものが組み合わされている。
ディスプレイは7型のフルHD(1,920×1,080ドット)でリフレッシュレートが120Hzと高いのがポイント。 より滑らかな描画でのゲームプレイを可能にしている。
本体サイズは280×111.38×21.22~32.43mmで重量は約608g。コンパクトなボディにハイエンドなAPUを搭載しているというのが最大の特徴だ。
そのほかスペックについては、メモリがLPDDR5-6400 16GB、ストレージは512GBのSSD(PCI Express 4.0 x4接続)、ネットワーク機能はWi-Fi 6E対応となっている。
知っておきたい重いゲームを快適に動かすコツ
テストの前に、ROG Allyで快適にゲームをプレイするためのゲームの画質セッティングのポイントに触れておこう。
まず重要なのは、アップスケーラーの積極的な利用だ。アップスケーラーは低解像度でレンダリングし、それに対して解像度をアップする超解像処理を行なって出力する技術だ。3Dレンダリングの負荷が軽減するので、その分、フレームレートを向上できるのが最大の強み。
アップスケーラーはさまざまな種類があり、ゲームやGPUによって対応するものは変わってくる(アップスケーラー非搭載のゲームもある)。
ROG AllyのGPUはRadeonなので、GeForce RTXシリーズのDLSSは利用できないが、それ以外のAMD「FSR」(FidelityFX Super Resolution)やIntel「XeSS」(Xe Super Sampling)、Unreal Engine 5「TSR」(Temporal Super Resolution)などは問題なく使用できる。
パフォーマンス/バランス/クオリティなど複数の設定を用意しているケースがほとんどで、パフォーマンス寄りにするとフレームレートは向上するが、画質は下がる。バランスあたりから試すのがよいだろう。
また、多くのゲームは画質をまとめて設定できるプリセットを用意しているが、まずは「中」程度から試すのがよい。GPUのパワー的に最高画質でプレイできるゲームは少ないからだ。
解像度はフルHD、アップスケーラーは「バランス」、画質は「中程度」から試してフレームレートがあまり出ないようなら、画質のプリセットをさらに下げる、または解像度を下げるという順序でやっていくとよいだろう。
最近のゲームではレイトレーシング対応も増えている。ROG AllyのGPUでも利用可能ではあるが、描画負荷が強烈に重いので少々厳しい。そのため、基本的にはオフでプレイをオススメする。
なお、ゲームプレイ中のフレームレートを確かめられる「リアルタイムモニター」機能が用意されているので、画質設定をするときは合わせて活用したい。
30タイトル超を一斉検証
Ryzen Z1 Extremeが高性能なAPUと言っても、どこまでゲームのプレイが可能なのか。ここからは新旧人気ゲームを31本用意してフレームレートを測定していく。
解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)とHD(1,280×720ドット)の2種類でテスト。フレームレートは、どちらかの解像度で快適なゲームプレイの目安である平均60fps以上になることを目指している。
タイトル数が多いので、描画負荷から筆者の判断で「軽量級」、「中量級」、「重量級」と分類した。あくまで、結果からざっくり分けただけなので、ベンチマークの条件やグラフを見やすくするための処理と思っていただきたい。結果はすべて平均フレームレートだ。
なお、動作モードは「Turbo」に設定して実行した。ROG Allyにはこのほかにも「サイレント」や「パフォーマンス」などが用意されているが、「Turbo」が一番処理性能を最大化してくれる。
軽量級ゲーム 6タイトル
まずは「軽量級」から見ていこう。中~高画質設定でも高フレームレートを出せるゲームをここにまとめている。タイトルと画質設定、ベンチマーク方法は以下の通りだ。
Counter-Strike: Global Offensive、VALORANT、レインボーシックス シージは軽めのFPSとして有名なので、高画質設定かつフルHD解像度でも平均100fpsを超えている。120Hzのリフレッシュレートを存分に生かせるのはうれしいところ。
2012年発売のEuro Truck Simulator 2や、2013年発売のGrand Theft Auto Vは、どちらも未だに人気のゲームだが、描画負荷は現在では軽量級と言ってよい。名作を余裕でプレイできてしまうのは、なかなかポイントが高い。
中量級ゲーム 11タイトル
続いて「中量級」だ。画質を中レベルに設定したり、アップスケーラーを活用することでフルHDでもある程度フレームレートが出るゲームをここに分類している。
BIOHAZARD VILLAGEや、F1 23は描画負荷が重めのゲームだが、アップスケーラーのFSRを使うことで中画質設定でフルHD解像度でも快適にプレイできるフレームレートが出ている。
Apex Legendsとオーバーウォッチ2の人気FPSは、アップスケーラーを使わなくても中画質&フルHDで高めのフレームレートを出せることに注目だ。
Dead by Daylightは最大62fps、ストリートファイター6は最大60fpsのゲームなので、最大フレームレートが60fpsで高止まりとなっている。性能が出ていないわけではないので注意したい。
Strayはたいして描画負荷が重いゲームではないが、相性なのかそれほどフレームレートが上がらなかった。人気のディアブロIVが低画質設定とはなるが、快適に遊べるフレームレートが出るのはうれしいところだろう。
重量級ゲーム 14タイトル
最後は重量級ゲームだ。プリセットを最低レベルにし、アップスケーラーを使ってなんとかプレイできる描画負荷の高いゲームをここにまとめている。
重量級に分類されているゲームの多くはレイトレーシング対応だが、オフにするのが基本。画質プリセットは一番下を選び、アップスケーラーを活用することが快適なプレイの条件と言える。
ここまで描画負荷を下げれば、Atomic HeartやDead Island 2、ホグワーツ・レガシーなどといった新しめの人気ゲームもフルHD解像度で楽しめる。
HD解像度まで落とせば平均60fpsに到達できるゲームが多く、ROG Allyではパワー不足でまったくプレイ不可能というゲームは現在のところほとんどない。
The Witcher 3: Wild Huntは2015年発売の古い人気RPGだが、2022年12月の新世代機向けアップデートによってグラフィックが強化され、描画負荷も高くなっている。
コントローラは使いやすく反応もグッド
ROG Allyは、本体、ディスプレイ、コントローラが一体化したポータブルゲーミングPCだ。キーボードはなく、操作はコントローラで行なうことになる。
本体の左側にジョイスティック、十字キー、表示ボタン、コマンドセンターボタン、右側にジョイスティック、Xboxと同じA/B/X/Y配列のボタン、メニューボタン、そしてROG Ally独自の設定などを呼び出すArmoury Crateボタンとなっている。
本体の上部には4つのトリガーボタン、背面にはマクロボタンも用意。Armoury Crate SEというユーティリティを使えば、各ボタンに好きな機能を割り当てたり、トリガーやスティックの動作調整も可能だ。
十字キーとA/B/X/Yボタンは1,000万回押下、ジョイスティックは200万回転の耐久性テストをクリアしているということ長期間でも安心して使えるだけではなく、反応も上々だ。
ストリートファイター6では問題なく必殺技が出せて、音ゲーの初音ミク Project DIVA MEGA39's+のプレイでもボタンの反応にズレは感じなかった。
FPS/TPSでもジョイスティックの精度も高く、スムーズにエイム可能だ(安価なコントローラではジョイスティックの精度が悪いことが多い)。
バッテリ駆動時間も気になるところだが、ASUSではヘビーゲームで約2時間、クラウドゲームで約6.8時間、動画再生で約6.8時間としている。長時間のゲームプレイではACアダプタの接続は必須だ。
コントローラだけでゲームをプレイしやすい工夫もある。「Armoury Crate SE」アプリはSteamやEpic Gamesなど主要なゲームプラットフォームに対応しており、インストールされたゲームは自動的に「Game Library」に登録される仕組み。一覧表示されるのでコントローラでも手軽に起動可能だ。
据え置きのゲーミングPCとしても活躍できる
ROG Allyの上部にあるUSB Type-Cポートは、ディスプレイ出力にも対応。大画面の外部ディスプレイに接続してPCとして使ったり、ゲームを楽しむこともできる。
ただし、本体にType-Cポートは1基しかない。据え置きPC的に使うなら、USB PD、ディスプレイ出力、USBハブ機能を備えたType-C接続のドッキングステーションを別途用意したい。
そうすれば、映像を出力しながら充電し、USB接続のマウスやキーボードも同時に使える環境を構築できるからだ。
据え置きPCとしての利用もアリなのは、基本性能の高さもある。試しにPCの一般的な処理を幅広く実行して性能を測る「PCMark 10」を実行してみよう。
PCMark 10は、Web会議/Webブラウザ/アプリ起動の“Essentials”で4,100以上、表計算/文書作成の“Productivity”で4,500以上、写真や映像編集“Digital Content Creation”で3,450以上が快適度の目安となっているが、すべて2倍以上のスコアを達成。普段使いのPCとして十分すぎる性能を持っていると言える。
外部ディスプレイと組み合わせて仕事に使用し、終わったら取り外してソファーやベッドでゴロゴロしながらゲームを楽しむなんて使い方も十分現実的なのだ。この汎用性の高さは、ゲーム専用デバイスではなく、Windows 11搭載のPCという点の強みだろう。
PCゲーム消化の強い味方が登場
手軽にPCゲームを遊べるデバイスとしてROG Allyは非常に魅力的だ。
軽めのFPS/TPSなら高フレームレートを出すことが可能で、重量級ゲームも画質設定の変更やアップスケーラーの活用で快適にプレイできるパワーを備える。それでいてコンパクトで、設置場所を考えることなくPCゲームの世界に没頭できるのはすばらしい限り。
PCとしての基本性能も十分高く、これからPCゲームを遊んでみたいという人や、積みゲー(未プレイゲーム)が増えすぎているので消化してきたいと考えている人にもオススメだ。
[モデル: 奥村 茉実(浅井企画)]
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