Research Press Release
Nature Communications
2023年8月16日
トラックの隊列走行(トラックが車列を組んで走行すること)を実施すれば、トラックの運行による温室効果ガス排出量が減ると考えられるが、路上の温室効果ガス排出量が約28%増加する可能性があると指摘する論文が、Nature Communicationsに掲載される。著者らは、トラックの隊列走行によって道路の劣化が進み、それに伴うメンテナンス作業による温室効果ガス排出量が増加すると考えられるとしている。トラックの隊列走行は、全世界で車両と道路の統合システムからの温室効果ガス排出量を5.1%削減できるが、トラックの運行に伴う費用負担が他の道路使用者や運輸当局・道路管理当局に転嫁される結果となる可能性がある。
世界のエネルギー関連の温室効果ガス排出量の23%は、運輸部門からの排出によるものと推定されており、自動車による化石燃料消費が主要な排出源となっている。現在提案されている排出量削減策の1つに、トラックの隊列走行の使用がある。これは、トラックの燃費を改善する方法として知られている。車列を組んだトラックは、営業走行する鉄道車両に似ており、それぞれのトラックが一定の車間を保ちながら同期して移動し、空気抵抗を減らして、その結果として燃料消費量を減らしている。
今回Huailei Chengらは、1457の道路区間を含む北米の大規模な道路網において、トラックの隊列走行の脱炭素効果を評価した。全体的に見ると、隊列走行は、車両-道路システムからの温室効果ガス排出量を実質的に削減した。しかし、Chengらは、隊列走行が、短期的に温室効果ガス排出量を削減するものの、道路システムに予期せぬ負担と損害をもたらす可能性があることを指摘している。例えば、隊列走行は、路面の寿命や安全性を低下させ、メンテナンス作業の必要性を高める可能性がある。
Chengらは、温室効果ガス排出量を削減すると運輸当局や一般市民の費用負担の増加につながるというトレードオフ関係を技術者や政策立案者が考慮することを提言している。また、トラックの隊列走行の利点を十分に活用するためには、今よりも強靭な道路用材料と道路構造を開発して、道路に対する負荷の増加に対処する必要がある。効果的なトラック配置を設計し、車両の道路占有率を減らすために交通量の少ない時間帯のみの隊列走行を奨励することは、隊列走行によって生じる可能性のある悪影響を緩和する上で役立つ可能性がある。
doi:10.1038/s41467-023-40116-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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