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Wednesday, July 5, 2023

AIを使ったコード生成ツールは生産性向上に役立つがバグが多くなることもある - WIRED.jp

tosokpopo.blogspot.com

GitHubOpenAIの文章生成技術を活用したプログラミングのコードの自動補完ツールである「Copilot」を発表したのは2021年6月のことである。これは価値の高い作業の自動化という、生成AI(Generative AI)の魅力的な可能性を初めて示すものとなった。それから2年が経った現在、Copilotはこれまで人にしかできなかったタスクを代行する技術として最も成熟した事例となっている。

Githubは、Copilotの有料版を利用している約100万人の開発者の利用状況に関するデータを解析し、革新的な生成AIによってプログラミングがどのように変化したかを示す報告書を6月下旬に公開した。これによると、利用者は平均すると約30%の確率で人工知能(AI)アシスタントの提案を受け入れている。つまり、精度が高く有用なコードを、システムが予測できているということだ。

上記の表は興味深いデータを示している。この表は、ユーザーがツールを長く使うほど、Copilotの提案を受け入れる割合が増えるというのだ。そして、AIを活用する開発者の生産性は時間とともに向上すると報告書は結論付けている。これは提案を受け入れた回数と開発者の生産性との関連性を認めたCopilotの以前の研究結果に基づくものだ。また、GitHubの新たな報告書は、経験の浅い開発者の間で最も生産性の向上がみられたとも説明している。

AI活用のパラドックス

これは一見すると、新しく登場した技術が早くもその価値を証明した結果のように見える。生産性を高め、スキルの低い労働者の能力を向上させる技術は、どんなものでも個人と広範な経済に利益をもたらす可能性が高い。AIによるコーディングは、30年までに世界のGDPを1.5兆ドル(約217兆円)も押し上げる可能性があるとの概算もGitHubは出している。

だが、開発者がCopilotを頻繁に利用している様子を示すGitHubの表を見て、Copilotのようなツールと開発者との関係についてタリア・リンガーと前に話をしたときに知った別の研究のことを思い出した。リンガーはイリノイ大学アーバナシャンペーン校の教授である。

スタンフォード大学の研究チームは、自前で開発したコード生成AIアシスタントの使用が、利用者の生成するコードの品質に及ぼす影響に関する研究論文を22年末に発表している。この研究によると、AIツールの提案を受けた開発者の仕上げたコードには、より多くのバグが含まれていた。しかもツールを使用した人たちは、そのようにして書いたコードの方がより安全だと考えていた。AIと協力してコードを書くことには「おそらく利点とリスクの両方がある」と、リンガーは話す。「コードを多く書けたとしても、それらの質が高いとは限らないのです」

プログラミングの性質を考えると、この結果は驚くべきものではない。22年の『WIRED』の記事でクライブ・トンプソンが指摘していたように、Copilotの機能は奇跡のように思えるかもしれないが、その提案はほかの開発者が書いたコードのパターンに基づいているので、バグが含まれている可能性があるのだ。

AIの提案を受け入れることは、非常に見つけにくいバグを生じさせることにつながる。ほとんどの状況で優れた性能を発揮するツールに魅了されている場合、なおさらこうしたバグを発見しづらくなるのだ。

ほかの工学分野の歴史から、人は自動化に依存してしまいやすいことも判明している。米連邦航空局は、一部のパイロットはオートパイロットに過度に依存するようになり飛行技術が衰えていると繰り返し警告しているのだ。こうした現象は自律走行車にも見受けられる。本来であれば利用者は、まれではあるが潜在的に致命的なエラーに対して警戒しなければならないのだ。

このパラドックスは、生成AIがたどり着く先、そしてそれが世界をどのように変えるかにおいて中心的なテーマとなるかもしれない。こうした技術は、すでにウェブコンテンツの品質の大幅な低下を招いている。評判の高いサイトにもAIが生成した粗悪なコンテンツが溢れ、スパム的なウェブサイトが急増し、チャットボットが人工的にエンゲージメントを引き上げようとしているのだ。

生成AIの複雑な影響

しかし、これは生成AIは役に立たないという意味ではない。生成AIのツールがカスタマーサポートの担当者といった一部の労働者の成果と幸福度の向上に役立っていることを示す研究結果も増えている。ほかの研究結果も、開発者がAIアシスタントを使用してもセキュリティ上のバグが増えることはないと示しているのだ

また、GitHubの名誉のために言うと、同社はAIのアシスタントを用いて安全なコードを書く方法を研究している。23年2月には、ツールを動かしているモデルが生成する脆弱性を見つけるCopilotの新機能を発表した

とはいえ、ほかの用途の生成アルゴリズムを展開しようとする企業は、コードの生成技術がもたらす複雑な影響に注意を払うべきである。

AIの危険性を懸念する規制当局や立法者も気に留めるべきだ。技術の可能性に対する大きな期待や、人類存亡の危機をもたらすかもしれないという過激な憶測が渦巻くなかでは、AIの導入がどのような影響をもたらすのかを示す、目立たないながらも実質的な証拠が見過ごされてしまう可能性がある。

近い将来、たいていの分野がソフトウェアによって支えられることになるだろう。注意していなければ、そうしたソフトウェアにAIが生成したバグがたくさん含まれてしまうかもしれないのだ。

WIRED US/Translation by Nozomi Okuma)

※『WIRED』による人工知能(AI)の関連記事はこちら


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