自分が試したポータブルゲーム機ではこれが一番持ちやすい! しかもバッテリーも長持ち。
ロジクール(Logitech)の「G Cloud」はクラウドゲームに特化したポータブルゲーム機です。近くのコンソールやクラウドからゲームをストリーミングして遊ぶスタイルなので、本体で大作ゲームを楽しむほどのスペックは要らなくて、その分価格はお安くなっています。ストリーミングゲームの普及はまだこれからなので、ほかのゲームがあまりプレイできない端末に350ドル(約4万7600円)払うのもどうかなあ、というのはありますけどね。Valveの399ドルの「Steam Deck」なら、ほぼ同じサイズで、ネット常時接続環境は不要。その差わずか49ドルなので揺れますよね。
Xbox Cloud GamingやNvidia GeForce Nowをスマホやタブレットで使った経験のある人なら、ロジクールがなぜこの種の製品を出すのか、およその見当がつくのではないでしょうか。いくら進化してもスマホやタブレットはタッチスクリーンですし、コントロール部も画面上に押し込まれていて、あんまり快適とは言えません。ワイヤレスゲームパッドですら、ゲーム専用の端末にはかなわないのが現実です。でも、G Cloudは Steam Deckより少しちっちゃいけど、軽くて、スクリーンもベターです。
問題はストリームゲーミング以外の用途があまり思いつかないこと。幅広く遊べるValveと50ドルしか差がないことを考えると、350ドルでも少し割高に感じてしまうのは自分だけでしょうか。
ロジクール「G Cloud」
これは何?
ポータブルゲーム機。Nvidia GeForce NowやXbox Cloud Gamingといったクラウドゲーミングに対応
価格
350ドル(約4万7600円)
好きなところ
操作感と造りの確かさはマイベストに入る、バッテリー長持ち、レトロゲームのプレイ環境は最高
好きじゃないところ
G Cloudで『フォートナイト』みたいなゲームではグラフィックスに難あり、多機能なSteam Deck(399ドル)と比べちゃうと50ドル安くても割高に感じてしまう
美しいデザイン
触って驚くのはその快適性。これほど手にしっくりなじむハンドヘルドはこれまで触ったことないです。元祖ゲームボーイ以来のポータブルゲーム機マニアの自分が言うんだから間違いありません。
ポータブルとしては大きいほうだけど、Nintendo Switchに近いので、おなじみのサイズ感ではあります。Steam Deckよりはやや小ぶりで、圧倒的に軽量(約460g)。
Switchは全体的にフラットですが、Logitech G CloudはSteam Deckみたいに立体感があって、後ろの出っぱりを握ると、何かに掴まってる感じが強くします。波々の溝でグリップ感アップ。ポケットに入れるとかさばるけど、手に持って遊びたい衝動はリアルに来ます(ドックに入れっぱなしで、本当に必要なときしか手に取らないSwitchとはえらい違い)。
Steam Deckほどボタンは多くないですが、上端にボタンが2つ付いていて、薄い方のボタンはキーストロークが極浅なのにすごくクリッキーです。大きい方のボタンはキーストロークが深くて、アナログ入力に対応。カーレースで使うと便利かな。トリガーには見えないけど、その役目を担うボタンです。
左右非対称のジョイスティックはともかく、XBox専用コントローラー風にレイアウトされたアクションボタン(A/B/X/Y)は、深く沈み過ぎるきらいがあります。個人的には、下まで押しても少し突き出ているほうが好きなんですが、これは単に僕の好みの問題であって、ゲームの操作性にはまったく影響ありませんでした。
本体の下にはヘッドホンジャックとUSB-Cポート(充電用)、アナログスピーカー用スリットが2つあって、最高のサウンドが流れてきます。いつもならヘッドホンつなぎっ放しのポータブルゲーム機も、これなら深夜ゲームするときだけヘッドホンで良さそう。
フロントにはHOMEボタンがあって、どんなアプリを開いてるときでも、ここを押せばエスケープできます。画面の上方には左右にマルチファンクション用ボタンが配されており、黄緑のロジクール(Logitech)のボタンは戻るボタンになるときもあるけど、大体はなんでついてるのかよくわからないボタンという感じでした。
総合するとハードウェアでは文句なしのG Cloudなのですが、欲をいえば2点ほど不満点もあります。
まず1点目が十字キー。ほとんどすべてのゲームで問題なく使えますが、高低差があるので、円を描くようなコマンド入力が求められるタイトルでは使いづらく感じました。『ストリートファイター』好きな人には向いてないかもしれません。
十字キーはもうニンテンドーがSNESのゲームパッドで完成形に到達してしまってると勝手に思っているので、わざわざ変えなくてもいいのに…と思ってしまいました。
2点目が電源ボタンです。ショルダーの間に音量ボタン、microSD用スロット(既定容量64GBからの拡張はここで)と並んであって、電源ON/OFFとスリープ・再起動はここで行なうんですが、位置が変で、横方向に力を入れないと電源が入らないので、指を目いっぱい伸ばさないと届かなくて。
もちろん、ほかのボタンを押しても起動するし、スリープへの切り替えは画面の操作でもできますが、上に付いてる電源ボタンはポチっと押すだけのシンプルなものの方が良かった…。
Androidのエクスペリエンスはそのままに
G CloudのOSはAndroid 11ですけど、端末を設定するときには(ゲーマーに最適な)「タブレットモード」か「ハンドヘルドモード」かの選択肢が与えられます。
ハンドヘルドモード(左)を選ぶとタッチの操作が最小限になって、ゲームコントローラーのボタンで簡単にナビできるようになります。ルック&フィールはXbox Series X|SなんかのUI風で、最近使った順にアプリのアイコンが自動的に並びますけど、よく使うアプリは下にピン留めも可能です。
Androidが初めての人は、ハンドヘルドモードの方がゴチャゴチャしてなくて使いやすく感じるかもですが、ほかの人はタブレットモードのほうが何かと便利です。見た目はそんなにかっこよくないけど、Androidのスワイプのショートカットが全部使えますからね。
なぜかハンドヘルドモードでは皆無効になっちゃうので、アプリ間を素早く移動するのが困難で、一部のアプリではUIのナビすら困難。まあ、そっちがダメならこっちと簡単に切り替えられるので特に問題はないですけどね。
クラウド上でゲーミング
G Cloudに350ドル払うだけの価値があるとするならば、それはこの美麗な7インチ・1080pの画面でストリーミングゲームを思う存分遊べるからにほかなりません。
何時間もかけてダウンロード&インストールしなくても 、『Halo Infinite』をXBox Cloud Gamingからゲーム機にストリーミングして遊べるのはまったく新しい体験です。 処理性能も十分で、それはWi-Fi 5の接続環境(家のギガバイトの大容量接続よりはるかに遅い)でも同じでした。
たま~に『High on Life 』では圧縮しすぎのYouTube動画みたいになることもありましたが(XBox Cloud Gaming側もまだ最大720pに制限されてますからね)、コントロール自在で反応も素早いです。
試しに手持ちのXbox Series Sのコンソールでリモートプレイしてみたら、やっぱりそっちの方が若干処理性能は上でした。『Hot Wheels Unleashed』のグラフィクス性能もTVに直接ゲーム機をつないでプレイしたほうが上ですが、G Cloudで遊ぶ時間の方が個人的には長かったです。すぐ手が届くところにあるので。
結局、この「すぐ手が届くところにある」のが、この製品最大の魅力なんだなーと実感しました。棚で埃かぶってる人は生活変わるかも。まあ、家のWi-Fiが遅くて不安定だとこうはいかないので、それは要注意ですけどね。会社のサーバーからどれだけ離れた場所に住んでるかにもよりますし(アラスカの山の中の人はクラウドゲーミングに飛びつくのはまだ先になりそう)。
ロジクールがクラウドゲーミングを主軸にしたのはわかるんですが、ならなぜWi-Fi 6や6Eに対応しなかったのか? 理由が釈然としません。対応したほうがWi-Fiアップグレード勢のストリーミング性能を最大化できたし、製品寿命も長くなったのに。
SIMカードスロットを搭載しなかったのにも同じことが言えます。ゲームを楽しめるのは、安定した接続環境がある場所だけなので、家にこもりっきりになるか、外ではスマホでテザリングして接続するかなので、もういい!スマホでプレイする!ってなっちゃわないか心配。
もっともSteam Deckの1280×800のディスプレイはここまで色鮮やかじゃないので、そっちに飽き飽きした人にはG Cloudは絶対優位。何を求めるか、ですよね。
バッテリーは圧倒的に長持ち
G Cloudが他を凌駕する特長といえば、バッテリー持続時間の方が差は明白で、1回の充電で最大12時間まで持ちます(ローカルでプレイするとバッテリーはみるみる減るので、これは省電なストリーミングゲームのなせる業)。
処理性能はそこそこレベル
これだけ長く持つのは、プロセッサが少し前の(2021年に廉価スマホで人気を博した)Snapdragon 720Gだからっていうのもあります。G CloudはSwitchやSteam Deckみたいな冷却ファンが要らないんですね。だからバッテリーにも負担がかからない。その分ネイティブのゲーム処理性能は下になっちゃいます。
なので究極のAndroidゲーム機が欲しい人は、ほかを探す方が得策かもしれません。スマホでちょっと暇つぶしにやるゲームは問題なくプレイできるんですが、もっと負荷のかかるAndroid対応ゲームは『フォートナイト』も『原神』 もグラフィックス性能がマックスアウトしてカクカクになることもしばしば。
もっとイラつくのがG Cloudのコントロールが使えないゲームもあることです。これはタッチスクリーンのマッピングソフトがあれば解決なのですが、G Cloudには入ってないのでGoogle Play Storeで自分で探して実装しなければなりません(Razerは最近Kishi V2にこれを加えたばかり。Razer Edgeに入ってる)。それをしないと、あれ?スマホより遅いぞーってなことになるので要注意ですね。
レトロゲームがめちゃ楽しめる
ロジクールは全然宣伝してないので使うまでわからなかったけど、G Cloudが輝くのはレトロゲーム機として使うときですね。なんせOSがAndroid 11なので、エミュレータ探しとインストールが信じられないぐらい簡単にできます。
これまで編集部でレビューしたエミュレータの多くは、遊べても初代プレステ辺りまでで、それより新しいゲームはプレイが困難だったりしました。セガDreamcastやニンテンドー64のタイトルは大丈夫なことが多いけど、フレームレートが落ちたりのトレードオフ付き。プレイできることはできるのだけど、プレイ環境はイマイチでした。
しかし、G Cloudは違います。レトロゲーム機としては結構優秀。市販のベストというほどじゃないけど、『スーパーマリオワールド』も1080pのスクリーンだとほんとにキレイ。ニンテンドー64の『ゴールデンアイ 007』もワンダフル。エミュの再現性はシステムごとに差が出ますが、G Cloudならゲームキューブ、PS2くらいまで遊べます。 もっと新しくて負荷のかかるシステムのタイトル向きではないかもですけどね。
買い?
ベッドでゴロゴロしながら、『Halo Infinite』はもとより『Microsoft Flight Simulator』みたいなタイトルまで遊べるなんて、正直まだ頭が追い付いていってません。ゲームはこれから不可避的にこうなっていくだろうし、高速Wi-Fi接続が家にあるならLogitech G Cloudはいい買い物でしょう。
ただ、Android対応ゲーム機のなかでは出色というほどじゃないし、今買えるベストなポータブルゲーム機というわけでもなくて、例えばValve Steam DeckならG Cloudでできることすべてができて、高速Wi-Fiとかなくても大作タイトルが遊べて、その差たったの49ドルなので、 外回りや機内の時間が長い人はそっちのほうがいい買い物ということになっちゃいます。ポータブル性を重視するなら。
ストリームゲーム機はRazer Edgeも含めて激しい価格競争に晒されています。Valveは自社のSteam Storeで昨年100億ドル(約1兆3600億円)もの売上を出しているので、Steam Deckは別にSteamのタイトル限定じゃないけど、Steamを広める端末という位置づけでSteamの収益をガンガン注ぎ込める有利なポジション。
片やRazerはといえば、米大手通信会社ベライゾンの独占的パートナーの強みがあります。Edgeの価格もベライゾンが一部補助していることは明白。その最新ゲーミングプロセッサ「Snapdragon G3x Gen 1」搭載初号機のEdgeですら、Steam Deckがライバルではそんなに高い値段を設定するわけにもいかなくて、最低400ドルからの価格設定に甘んじています。
ロジクールには自社のゲーミングストアもゲームスタジオもないメーカーさんですので、G Cloudの採算はG Cloudで取るしかありません。そのうちどこかのゲームストリーミングサービスと独占契約を結べば少しは安くできるんでしょうけど、そういうアテもなさそうだし…。
何度か割引キャンペーンを目にしたので(執筆時点では300ドルに値下げ中)、350ドル固定でもないようですが、300ドルでもまだ高くて、250ドルを切ったらやっと人が寄ってくるような予感。定価の350ドルのままでは競争の土俵に立つ前に負けちゃいそうです。日本発売されるときの価格はまた違うのかもしれませんけどね。
からの記事と詳細 ( Steam Deckより安くクラウドゲーミング ロジクールの「G Cloud」 - GIZMODO JAPAN )
https://ift.tt/srGZDUA
科学&テクノロジー
No comments:
Post a Comment