新たなスキルを身につけて自分らしい働き方を再発見した人から、リスキリングのヒントを聞くNIKKEIリスキリングの好評連載「my リスキリングストーリー」。今回は、幼い頃からの目標である経営者を目指し、スキルの「幅」を意識しながらキャリアを重ねてきた宮本晋一郎さん(37)です。
2022年に早稲田大学ビジネススクールで経営学修士(MBA)を修了し、LINEを活用したマーケティング事業を行うスタートアップ、DOTZ(ダッツ、東京・渋谷)で最高執行責任者(COO)を務める宮本晋一郎さん。DOTZの社名は、米アップル創業者のスティーブ・ジョブス氏がスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの一節「点と点をつなげる」(connecting the dots)にちなんだものだが、宮本さん自身「キャリアの点と点がつながってきた」と実感しているという。
宮本さんにとって最初の「点」となったのは、大学卒業後の09年に就職した日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)。生まれ育った高知では両親をはじめ親戚に経営者が多く、「いつかは自分も」と憧れていた。証券会社を選んだのは、「経営者や富裕層の顧客が多く、彼らの頭の中を知ることができるはず」と考えたからだ。
キャリアの「振れ幅」を意識 転職先で自分を180度変えた
「3年以内に同期の中で営業成績が1番になったら辞めます」
採用面接でそう宣言。入社直前に起きたリーマン・ショックで証券業界は冷え込んでいたが、複数の評価項目で有言実行し3年目に次のキャリアを探した。意識したのは「振れ幅」だった。
「将来、経営者になるには幅広い経験や知識が必要なので、キャリアの振れ幅を大きくすることで、違うスキルを身につけられると思ったんです。だから金融とは畑違いのIT、大企業じゃなくスタートアップがいいなと」
転職先はビッグデータを活用し企業のマーケティングを支援するマイクロアド。同社は22年6月に東証グロース市場に上場したが、宮本さんが入社した当時は創業5年目、社員50人程度のスタートアップだった。前職での実績から、それなりの自信を持って入社。ところが、同じ営業でもまったく成果を出せずに苦しんだ。
「カルチャーの違いに戸惑いました。証券会社は、成果を出すためには死に物狂いで働くのが当たり前。そのためには1分1秒も無駄にできないという風土で、僕自身その中で頑張ってきた。でもスタートアップは、がむしゃらな人もいる一方で仕事はほどほどというタイプの人もいて、優秀さの質や価値観が違いました。朝会も前職では単刀直入に仕事の話に入るのが普通でしたが、マイクロアドはサークルみたいなノリもあり、きのうのサッカーの試合とかエンタメの話題でひとしきり盛り上がってから本題に入る。それなのに僕は社内的にもお客さんに対してもすごく頭でっかちなコミュニケーションをしてしまい、歯車がかみ合っていませんでした」
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