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Tuesday, December 13, 2022

ポータブル史上最強か!? 「Devialet Mania」を聴く - AV Watch

tosokpopo.blogspot.com

Made in Franceのインパクト

2018年に記事になった、Devialet(デビアレ)「PHANTOM」をご記憶だろうか。繭型とも言える奇妙な形だが、重低音大出力が可能なスピーカーで、フランス製ということもあり、注目度は高かった。ただ価格が249,000円から399,000円ということで、一般庶民からすれば「ハイ解散」案件であった。

GOLD PHANTOM

その後2021年に後継機も登場したが、これも価格が31万9,000円から51万9,000円ということで、もはや業務用なんじゃないかと思われた。実際に店舗への導入にも力を入れていたようである。

そんなDevialetから、バッテリーを内蔵したポータブルスピーカー「Mania」が登場した。形状は繭型から球形となり、価格も139,000円からと、ずいぶん下がっている。もちろん高い事は高いのだが、頑張れば買えないこともない値段まで下がってきたという感覚はある。

独特のサウンドと言われてきたが、ずっと試聴する機会に恵まれなかった。今回の「Mania」で、初めてDevialetサウンドを体験してみた。

球形に特殊ドライバ配列の組み合わせ

Bluetoothスピーカーは様々な形状が存在するが、モノラルは円筒形、ステレオは直方体がスタンダードだ。球体スピーカーで昨今記憶に新しいものとして、2020年にリニューアルしたAmazon Echoがある。

従来ステレオスピーカーは、ドライバ位置を左右に離さないと正しいステレオセパレーションが得られないとする考え方だったが、これはいわゆるホームオーディオスタイルの延長線であろう。一方ステレオのドライバを1点に集めるという考え方は、ステレオセパレーションよりも音の放射を重点的に考えた設計である。モノラルだったスマートスピーカーを起点とした考え方とも言える。

Devialet Maniaは直径17cmぐらいの球体ボディを採用しているが、内部的にはステレオスピーカーである。形状が前と後ろでシンメトリックなので、まず正面がどっちなのかという話になるわけだが、頂点にあるロゴの向きからすると、電源ボタンを右側にした位置を正面と考えるべきだろう。

前面から見ても球体
背面から見ても全く同じ形状
頂点のロゴで正面がわかる

てっぺんのハンドル部分は、柔らかいビニールバンドを引っ張り上げたような形だが、実際には樹脂製の芯材があり、その上にゴム素材がはめ込まれている。したがって指で押してもビクともしない。

球体の前半分の上部に、上に逆ハの字の方向でフルレンジスピーカーがステレオセットで搭載されている。正面中央部はウーファーで、実質2.1chシステムである。そしてこのセットがそのまま、後ろ半分にも搭載されている。つまり裏表で2.1ch×2、と言うことになる。

球体上部のファブリック素材の奧にステレオスピーカーを装備

ウーファー部は、むき出しで手で触れるようになっているが、コーン紙ではなく硬い樹脂製だ。単にカバーというわけではなく、これ自体が大きく振動している。コーンドライバというよりは、アクチュエータに近い構造なのではないかと想像する。

ウーファー表面は硬い樹脂製

周波数特性は30Hz~20kHzで、ハイレゾ対応ではない。BluetoothコーデックはSBCとAAC。そのほかAirPlay 2とSpotify Connectにも対応し、Wi-Fi経由でサブスクサービスから直接ストリームを受けて再生することもできる。

ボタン類は、右側上から電源、Bluetoothペアリング、バッテリー残量確認ボタン。その下にあるのは、測定用マイクのON/OFFスイッチと充電用USB-Type C端子だ。内蔵バッテリーによる連続再生時間は、約10時間。マイクスイッチがあるのは、プライバシー保護のためだと思われる。

右側のボタン
右側下にあるマイクON/OFFスイッチと充電用USB-C端子

左側は上から再生・停止、ボリュームアップ、ボリュームダウン。電源やペアリング状態は、再生ボタンの上のLEDライトでわかる。またバッテリー残量はボリュームダウンの下に表示される。

左側のボタン。一番上にステータスLEDが光る
バッテリー残量は4つのLEDで表示

底部の金属部分は専用のクレードルを使用する際の充電端子だ。重量は2.3kgで、片手で持てる重さではあるが、見た目の印象よりは重たい。

底部の端子はクレードル用

カッキリした解像感が魅力

本機は単にBluetoothスピーカーとしても利用できるが、専用アプリを使ってセットアップすると、Wi-Fi接続もできるようになるので、ネットサービスから直接再生ができる。専用アプリは「Devialet」で、ウィザードどおりに進めていけばセットアップできる。

アプリを起動すると、近くの製品がスキャンされる

対応ストリーミングサービスは、Spotify、Qobuz、Deezer、Tidal、Audirvanaのほかウェブラジオ(Tune In)も使える。またiPhoneやMacでは、AirPlayを経由してApple Musicからも再生できる。

Wi-Fiで直接利用可能なサービス
イコライザーもあるが、機能的にはシンプル

では早速試聴してみよう。電源を入れ、ネットワークに繋がると、「ブーン~ポコ」といった起動音が、まあまあの音量で鳴る。イヤフォンやヘッドフォンは起動音が鳴るものが多いが、スピーカーでは比較的珍しい。深夜に起動すると、案外大きな音が出てびっくりする。

試聴サンプルとしてApple Musicでドナルド・フェイゲンの「Morph The Cat」を再生したが、まず出だしの音のパンチ力にびっくりした。まるでサブウーファ有りのブックシェルフスピーカーシステムみたいな音がする。音量を上げても、歪まない。このサイズのスピーカーからこんな低音が出るのかと、改めて驚いた。

これは面白いと思って、ベースが特徴的な音楽を中心に聴いていったが、周波数特性30Hz~が示すように、必ずしも「音程としての低音」がよく出るわけではないようだ。むしろアタックの立ち上がりがものすごく速く、ウーファーのストロークも深いことで、アタックがよく出るのだとわかった。バスドラの音は、低音というよりはスタッカートな空気泡に近い。こうした瞬間的に空気をドーンと押すパワーを持ったドライバという事だろう。

中域はやや大人しめだが、高域の伸びは非常に良い。耳に刺さる一歩手前で収まる感じがあり、音量を上げてもやかましさがない。フルレンジが逆ハの字で横向きに付いているため、高音が直進してこないところも功を奏しているようだ。

構造としては、前面と背面はシンメトリックに同じスピーカーが付いている。従って、本機を回転させても、あるいは本機の回りをぐるっと回っても、どこから聴いてもだいたい同じ音になる。左右のステレオイメージで展開するのではなく、ステレオソースを活かしながら空間全体に音が広がるという、面白いサウンドイメージだ。スピーカー位置から音が出ているのはわかるが、モノラル感がない。

アタック感が強いので、ジャズ・フュージョン系の隙間のある音楽が気持ちよく聴ける。およそ30年ぶりに新曲を出したAnimal Logicなどは、スタンリー・クラークのスラップを実に気持ちよく聴かせてくれる。ボーカルの伸びやツヤも十分だ。

一方で音が混み合ったロックも、きちんとビートというかエッジで整理して聴かせてくれる面白さがある。Age Of Impactの「Fate Speaks」という曲は、ドラムの手数が多いのに(テリー・ボジオなので)ミックス的に奥に引っ込んでいて、加えてベースもブーミーなので全体的になにやってるのかさっぱりわからないという、再生上の難曲だが、Maniaで聴いてようやく何をやってるのかが聴き取れた。こればかりはボリュームを上げれば聴こえるというものでもないので困っていたのだが、積年の疑問がスッキリした。

独自のASC(Active Stereo Calibration)は、4基の内蔵マイクを使って常時音響測定し、音の出力を変える機能だ。同様の機能は、Amazon Echo Studioにも搭載されているが、本機の場合はちょっと動作が違う。背後に障害物がない場合は360度ステレオモードになるが、背面に障害物がある場合は、前方へ向けたステレオイメージの放出する。

具体的に何をやっているのか資料がないが、おそらく反射音を測定して位相調整などをしているのではないかと思われる。どこに置いてもトータルの音像はあまり変わらないように自動チューニングされる。

Maniaは小音量再生も面白い。普通は音が小さくなると、低音が聞こえなくなっていくものだが、Maniaは音量を絞っても低域が痩せず、きちんと出てくる。こうした音量に左右されずだいたい同じイメージの音を出してくるというのも、入念に時間をかけて設計されている証拠だろう。

総論

昨今は本当にオーディオが面白くなった。従来の2chステレオにこだわらない音像表現が一気に花開いた感がある。

Devialet Maniaは、バッテリー内蔵のポータブルスピーカーという事になるが、サイズ的にはハンドボールぐらいのサイズなので、少なくとも小さい方ではない。とは言え、出てくる音はこのサイズとは思えないほど低音がガッチリした、スケールの大きい音がする。

低音が出るBluetoothスピーカーも多いが、ボリュームを上げるとどこかで破綻するポイントが見つかることが多い。一方、本機はそうした無理感がなく、ボディの剛性も相まって、余裕で鳴らしている。このサイズでアンプが176Wもあればそりゃそうだろうよとは思うが、少なくともこれまで筆者が聴いたポータブルスピーカー中では、最も骨太のサウンドを聴かせてくれる逸品だ。

価格的にはJBL、Bang & Olufsen、KEFあたりの高級ブランドと並ぶことになるが、ステレオセットではなく単品で置き場所自由、しかも音像の面白さという付加価値も付いて、なかなか面白いところにポジション取りしてきたなという印象である。

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