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Wednesday, August 17, 2022

16型大画面とRTX 2050搭載で約1.3kgの軽さを実現した独創的モバイルノート「LG gram」 - PC Watch

tosokpopo.blogspot.com
LG gram 16Z90Q-AA79J1(価格29万2,500円)

 LGエレクトロニクス・ジャパンから、また少々ユニークなノートが発売された。LGは、卒のない優等生的な製品を出しつつも、ときどきすごく挑戦的な製品や変わり種の製品を出してくるからおもしろい。今回紹介するノート「LG gram」は、16.8mmの薄さと約1,285gの軽さというモバイルノートの特徴を持ちつつ、16型の大画面とGeForce RTX 2050を搭載しているという、一瞬「ん?」と思わせる製品である。

 モバイルノートなのに16型というだけでも変わっているのに、GPUまで搭載しているのだから、もうこれは変態的(褒め言葉)と言ってもよいレベルのノートではないだろうか。加えて、GPUを搭載しているにも関わらず、バッテリ駆動時間もなぜか約25時間もある。

 ちなみにほぼ同じスペックで17型モデルも用意されており、そちらもモバイルノートだ。17型モデルはさすがに少し重くて約1,435gだが、それでも17型でGPU入りなのにこの重量はなかなか驚きである。厚みも17.7mmしかなく、確かにモバイルノートと言ってもよい軽さと薄さだ。

 ほかにも17型と16型でGPUなしのモデルと、これぞ一般的なモバイルノートと言える、重さ約999gの14型モデルがラインナップされている。なお、製品名はすべて同じ「LG gram」で、製品の違いは型番で区別されている。今回紹介するのは16型のGPU入りで、LG gramの「16Z90Q-AA79J1」(以下、LG gram)というモデルだ。

【表】LG gram 16Z90Q-AA79J1の主なスペック
製品名 LG gram 16Z90Q-AA79J1
CPU Core i7-1260P(Pコア×4+Eコア×8、16スレッド、最高4.7GHz)
メモリ LPDDR5-5200 16GB(デュアルチャンネル)
ストレージ SSD 1TB(M.2、NVMe、PCI Express 4.0 x4)
グラフィックス GeForce RTX 2050(GDDR6 4GB)
ディスプレイ 16型液晶(2,560×1,600ドット、非光沢)
主なインターフェイス Thunderbolt 4×2(DisplayPort、USB PD対応)、USB 3.1×2、HDMI、microSDカードスロット、ヘッドホン/マイク
通信機能 Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1
Webカメラ 1080p(1,920×1,080ドット、Windows Hello対応)
バッテリ駆動時間 約25時間(JEITA 2.0)
OS Windows 11 Home
本体サイズ 354.4×242.1×16.8mm(幅×奥行き×高さ)
重量 約1,285g
付属ソフト Microsoft Office Home & Business 2021
実売価格 29万2,500円

4+8コアのハイブリッドCPUとRTX 2050を搭載したハイスペックノート

 LG gramはモバイルノートとしてはなかなかのハイスペックで、CPUにはPコア(Performanceコア)を4コアとEコア(Efficientコア)を8コア搭載した、4+8コア構成の第12世代Core i7-1260Pを搭載している。Core i7のPシリーズは高性能なスリムノート向けのCPUシリーズで、この記事執筆時点でラインナップは6製品ある。

 Core i7-1260Pはその中で上から3番目のCPUで、ラインナップ全体で見るとキャッシュが多めでクロックが高めのCPUだ。下位の3つのCPUとは結構大きな差があり、明確に上位のCPUとなっている。

 パフォーマンスハイブリッドアーキテクチャを採用したAlder Lakeこと第12世代Coreということで、通常の処理はCoreベースのPコアで行ない、動画のエンコードなどといった単純で並列処理が有効なものはAtomベースのEコアで行なう仕組みのCPUだ。処理内容に応じて処理するコアを変えることが大きな特徴となっている。

 たとえば動画をエンコードしながらオフィスソフトを使用した場合などに、動画のエンコードはEコアが行ない、オフィスソフトの処理はPコアが行なうことで、どちらの処理も同時に高速に実行できる。この特徴を最も体感できるのは裏で何かの処理を走らせているときで、動画エンコードの例で言えば、エンコード中でもオフィスソフトが重くなるということがない。

 実際は処理内容によるのですべての場合で同様になるわけではないが、異なるソフトの同時実行に強いCPUであることは確かだ。

4+8コア構成の16スレッド対応CPUということで、タスクマネージャの論理プロセッサ数は横4つ×縦4つというなかなか凄いことになっている。これは裏で動画エンコードを行なっているところをキャプチャしたものだ

 メモリにはLPDDR5-5200メモリをデュアルチャンネルで16GB搭載している。Core i7-1260Pの対応メモリは最高クロックがLPDDR5-5200までなので、CPUが対応する最も速いメモリを搭載していることになる。ストレージは、PCI Express 4.0 x4接続のM.2 SSDで、容量は1TBだ。こちらも現状最速と言えるインターフェイスで接続されており、容量も十分過ぎるほど大きい。

搭載しているSSDはSamsungのMZVL21T0HCLRで、リテール販売される際はPM9A1と呼ばれている1TBのSSDである。スペックの公称値は読み出し速度が最大7GB/s、書き込み速度が最大5.1GB/sとなっており、かなり速い

 グラフィックスには、ちょっとめずらしいGeForce RTX 2050というGPUを搭載している。RTX 20シリーズというと一世代前の古いGPUに見えるかもしれないが、最新世代のRTX 30シリーズは主にゲーミングノートに搭載され、RTX 20シリーズやMXシリーズはクリエイター向けノートに搭載されるので、一世代前を搭載していてもおかしくはない。また、このGeForce RTX 2050はRTX 20シリーズとはいっても、2021年の12月に発表されたばかりの比較的新しいGPUだ。

 GeForce RTX 2050は、CUDAコアの数が上位のGeForce RTX 2060が搭載する1,920よりも少し多い2,048だが、その代わりにメモリインターフェイスを192bitから64bitに大幅に狭くしてあり、ビデオメモリも6GBから4GBに少なくすることで上下関係のバランスが取られているGPUである。

 一方、GPUサブシステム電力は30~45Wとなっていて、GeForce RTX 2060の65~115Wよりも圧倒的に低消費電力だ。RTX 20シリーズとしては際立って省電力性能が高いGPUということで、LG gramのようなスリムなモバイルノートには最適と言えるかもしれない。

搭載しているGPUはRTX 20シリーズに最後に加わった最新GPUとも言えるGeForce RTX 2050だ。採用例があまりなく、個性的なLG gramらしいレア度が高いGPUである。低消費電力なのでモバイル用途に向いている

マグネシウム合金の強さとやわらかさが同居したボディが魅力

 本体はマグネシウム合金製で、金属ともプラスチックとも言えないような独特の質感を持っている。触ってもアルミニウムのような冷たさは感じず、高い剛性があることは分かるのに、やわらかい感触のあるボディだ。この、しっかりとしているのにやわらかく感じる雰囲気はまさしくマグネシウム合金である。

 16型ノートなので本体サイズは354.4×242.1mm(幅×奥行き)と結構大きく、たとえばA4用紙を横にして重ねてみると、横に57.4mm長く、縦に32.1mm長い。ちなみに筆者が普段使っているビジネスリュックに入れてみたところ、見事にピッタリサイズだった。バッグはちまたでも良く見かける一般的なサイズで、約300×400×80mm(幅×高さ×厚み)のものだ。

 LG gramは厚みが16.8mmしかないのでバッグに入れやすく、入れてからもかさばることがない。約1,285gという重量もそれほど重く感じることはなく、サイズは大きめだけどちゃんとモバイルノートだなと感じさせる。

 また、米国国防総省の軍用調達基準である「MIL-STD-810G」に準拠したテストをクリアしており、衝撃や落下や振動、そして高温や低温、高高度、砂塵などに強いことも特徴である。見た目は普通のスリムノートに見えるが、実はいわゆるタフ仕様のノートなのだ。

アスペクト比16:10で2,560×1,600ドット表示のちょっと広い16型ディスプレイを搭載

 搭載するディスプレイは少しめずらしい16型サイズだ。サイズが大きいので当然だが、見やすくて快適である。解像度も2,560×1,600ドットもあるので、ソフトを使用したときなどに結構画面が広く感じる。

 初期設定ではWindowsの表示スケーリングが150%となっているが、これを100%にするとかなり広い。ただ、100%にすると文字が小さくなって見えなくなるので、150%とは言わないまでも適度なスケーリングに設定するとよいだろう。

 このディスプレイはアスペクト比が一般的な16:9ではなく16:10なのもポイントで、縦に少し広いので全体もより広く感じる。たとえばWebブラウザなどの縦にスクロールするタイプのソフトではそれが顕著で、一画面に表示できる情報量が多いので大変使いやすい。

 ディスプレイの表面処理は非光沢となっていて、窓の近くや屋外などで使用しても映り込みで画面が見えなくなるということがない。室内照明でももちろん問題なく、多少の光源の反射はあるが目立った映り込みはなかった。

 また、スペックを見れば自明のことではあるが、LG gramはクリエイター向けの用途も意識しており、使用しているIPS液晶パネルはDCI-P3を99%カバーした広色域対応のものとなっている。

 しばらく使ってみた感想としては、16型のディスプレイを搭載したモバイルノートというのはなかなか新鮮だった。実際に持ち歩いても苦にならない軽さと薄さで、どこに行ってもこの大画面と高解像度で作業を行なえるというのは、普段ノートを持ち歩く人に対してかなり強力な売りになると思う。小さいことが魅力のモバイルノートとは言っても、やっぱり画面は大きいほうが使いやすい。

16型サイズでアスペクト比16:10の2,560×1,600ドット表示という、これで使いにくいわけがないと言える大画面高解像度液晶を搭載している。大きいし広いしで、実に使い勝手がよい
表面は非光沢となっており、このように光を当てても映り込みはほとんどなく、光源の反射も最小限に抑えられている。ディスプレイの視野角は公開されていないが、かなりの角度から見ても問題なく見える
ディスプレイは実測で約145度まで開くことができる。実使用でこんなに開いて使うことはないと思うが、机に置いて立ち上がって使う場合にちょうどよいくらいの角度ではある

インターフェイスはUSB Type-CとType-Aが2ポートずつでちょうどよい塩梅

 インターフェイスは、5,120×3,200ドット/60Hzの画面出力とUSB PDの入出力に対応したThunberbolt 4を2つに、USB 3.1を2つ、4,096×2,160ドット/60Hzに対応したHDMIを1つに、microSDカードに対応したカードスロットを1つ、そしてヘッドフォンとマイク兼用の3.5mmステレオミニジャックを1つ備えている。Thunberbolt 4は充電用の端子と兼用なので、電源接続時に自由に使えるThunberbolt 4は実質1つということになる。

 このノートを据え置きで使うことを考えた場合にはすごく充実したインターフェイスというわけではないが、足りないということもなく、必要なものを卒なく備えていると言える。ただ、頻繁に持ち歩く完全なモバイルノートとして使う場合には十分に充実したインターフェイスと言えるだろう。もしほとんど据え置きのノートとして使うのなら、USBハブを接続するだけで何の不自由も感じないはずだ。どちらにしても、ちょうど良い塩梅のインターフェイス構成である。

 Webカメラは1080pの1,920×1,080ドットに対応したものを搭載しており、Windows Helloに対応しているので顔認証でログインやパスワードの入力を行なえる。Webカメラを利用したユニークな機能も搭載していて、画面から目を離した際に画面表示にモザイクをかけたり、ノートの前から離れた場合に設定した時間が経過すると画面をロックしたりできる。自分の後ろに人が立ったときに警告してくれる機能などもあり、人が多い場所で使う場合などにセキュリティを高めることが可能だ。

 マイクにはAIノイズキャンセリング機能を搭載しており、ノートの前にいる人以外の声や音を除去できる。たとえばWeb会議中に家族の声が入ってしまったり、食器の音が聞こえてしまったりすることを低減することが可能だ。ノイズキャンセリングはマイク入力だけでなくスピーカー出力にも適用でき、Web会議で相手が話している音声を鮮明にすることもできる。なにかとWeb会議をする機会も増えてきたので、便利な機能である。

 スピーカーは、本体裏側の手前寄りの左右に1.5W出力のものを搭載している。音質はスリムなモバイルノートとしては十分なもので、Web会議などでの使用ではまったく不満を感じることはないし、音楽を流しても楽しく聞ける。結構広がりがある音を鳴らすので、映画などとも相性が良い。サラウンド規格のDTS:X Ultraにも対応している。

キーボードはノートとしては深いキーストロークが魅力

 16型サイズのノートということで、キーボードにはテンキーも搭載している。キーピッチは19.05×18.5mm(横×縦)でほぼフルサイズだ。キーストロークも1.65±0.2mmなのでノートとしては深く、かなり打ちやすい。中央付近を強めに押すとキーボードが若干たわむが、キー入力時に気になるほどではなく全体によくできたキーボードである。筆者は使い始めてすぐにすんなりとブラインドタッチで文章を入力することができた。

 ただ、実のところは主要キー以外のかなりの部分に細長いキーを使用した変則キーボードになっていて、せっかく搭載しているテンキーもすべてが細長いキーである。前述した通り特に問題なく使えたし使いやすいキーボードなのだが、細長いキー、たとえば「Ctrl」や「-」、「_」、括弧のキーなどは慣れるまで押し間違えることが多くなるかもしれない。

 慣れが解決してくれるとはいえ、いっそのことテンキーは搭載せずに完全フルサイズのキーボードを搭載するという手もあったのではないかと思う。個人的にはその点が少々残念だ。ただ、テンキーが必要な人にとってはこの構成のほうがうれしいだろう。

 タッチパッドは、より使いやすくするためにディスプレイのアスペクト比に合わせたという、16:10の縦横比のものを搭載している。サイズは約130×80mm(幅×奥行き)と適度に大きくて使いやすい。左右のボタンはボタンが独立して存在するタイプではなく、タッチパッドと一体型のタイプだ。ボタンを押したときに反応するポイントが左右の端に行くほど深くなっており、押す場所によって結構大きく感触が変わるので慣れるまでは多少の違和感が出る。

 まあ、ボタンを使わなくてもほとんどの操作はタッチ操作で行なえるし、最近のノートはどこの製品もこのタイプなので、LG gramに限らずノートにとってタッチパッドのボタンというものがオマケ的な位置付けになってきているのかもしれない。

キーボードはテンキー付きだが、一部のキーとテンキーが細長い変則キーボードとなっている。主要キーはほぼフルサイズでキーストロークも深いので、基本的にはとても打ちやすい
タッチパッドはディスプレイに合わせて16:10の比率を採用したという大型のものを搭載。表面がサラサラとしていて手触りが良く、長時間使っていても気持ち良く使える

Windowsからスマートフォンの画面を操作できる機能を搭載

 ほかに便利な機能としてスマートフォンと接続できる機能があり、スマートフォンへの着信やメッセージの受信をLG gram上でお知らせしたり、LG gramからメッセージに返信したりすることができる。また、LG gramにスマートフォンの画面をリモートデスクトップのように表示して、タッチパッドとキーボードでスマートフォンの操作を行なうことも可能だ。

 メッセージを送るときはキーボードで入力できるし、ゲームをプレイしたり、スマートフォンのカメラを起動してLG gramから撮影を行なったりすることまでできてしまう。この機能を使用する際には専用アプリの「Virtoo by LG」をAndroidスマートフォンまたはiPhoneにインストールし、LG gramにプリインストールされている同名のソフトを起動してペアリングする必要がある。

 また、LG gramには「Microsoft Office Home & Business 2021」がプリインストールされているので、買い切り版のOfficeが必要な人には便利である。ちなみに、GPUを搭載した16型モデルと17型モデルはOfficeありのモデルのみでOfficeなしのモデルはない。GPUを搭載していない16型モデルと17型モデルにはそれぞれOfficeなしのモデルも用意されている。14型モデルは、GPU搭載モデルと同様にOfficeありのモデルのみとなっている。

 LGのノート以外ではあまり見たことがないユニークな機能として、バッテリ残量表示機能がある。これは、LG gramの電源がオフの状態で充電ケーブルを抜き挿しすると、画面にバッテリ残量が表示されるというものだ。表示されるまでに少しタイムラグがあるものの、Windowsを起動することなくバッテリ残量を確認できるのは便利である。

Virtoo by LGを使うと、スマートフォンへの通知などをLG gramで確認できるほか、スマートフォンの画面を表示してタッチパッドおよびキーボードで操作を行なうことができる
電源オフの状態のときに充電ケーブルを挿すと画面にバッテリ残量が表示される。抜くときにも表示されるので、出かける際など「あとバッテリ残量どれくらいだっけ?」なんてときに便利である
LG gramの機能というわけではないが、LG gramが入っていた箱の中に卓上カレンダーが入っていた。箱の隙間を埋めるための段ボールを利用したもので、自分で組み立てて使用する。ちょっと楽しいオマケだ

RTX 2050搭載モバイルノートの性能はいかほどか?

 最後にベンチマークテストの結果を見てみよう。今回はGPU非搭載モデルである「LG gram 16Z90Q-KA79J」も使用できたのでそちらのテストもあわせて行なった。両者の違いはGPUの有無以外は、バッテリ容量がGPU搭載モデルが90WhでGPU非搭載モデルが80Whということと、Officeの有無のみである。なので、単純にGeForce RTX 2050の有無による性能差を見ることができる。

 まずはWeb会議や文書作成、表計算ソフトや写真加工、さらにゲームなど、ノートの用途をほぼ網羅したテストを行なえる「PCMark 10 v2.1.2556.0」の結果を見てみよう。

 さて、その結果なのだが、グラフを見ての通りおかしなことになっている。GPU搭載LG gramのほうがGPU非搭載のLG gramよりもおおむね悪い結果になったのだ。特におかしいのは、GPUの性能が大きく影響するGraphics scoreの結果である。GPUの有無でほとんど差がない結果となっており、これではGPU搭載LG gramがGPUを搭載している意味がない。

 GPUが有効になっていないのかとか、ドライバが正しく適用されていないのかなど、いろいろ原因を探ってみたのだが、最終的にたどりついた結論は熱の問題だ。というわけで急遽追加で行なったのが、GPUを搭載したLG gramの冷却モードの設定を初期設定から最強の「高」に変更したテストである。なお、それでも結果が芳しくなかったため、本体の後ろのほうの底面に消しゴムを2個置いて、本体の吸気口部分を机から少し浮かせて再度テストを行なった。それがグラフ内の3本目の棒である。

 テスト結果を見ると、Graphics scoreは当初の倍以上のスコアになり、その下のPhysics scoreも3倍近くスコアが上がった。Physics scoreはCPUの性能を見るテストなので、直前のGraphics scoreでGPUが発熱したために、その影響をCPUが受けてしまっていたのだと思われる。

 つまりGPUを搭載したLG gramは、本体の冷却モードが初期設定のままではまったく冷却が追い付いていなかったのだ。単純にGPUの分の熱を排熱し切れていないのか、内部でCPUとGPUがヒートパイプでつながれていて相互に影響を与え合っているのか。どちらにしても、スリムで軽いということを追求し過ぎて冷却面が疎かになっているのかもしれない。

 性能が欲しいときにだけ冷却モードの設定を「高」にして使えば、GPU搭載ノートのメリットを得ることはできる。もっと性能が欲しいときは、本体の後部の下に何かを置いて本体を少し浮かせればよい。外で使うとき以外はノート用のクーラー台を使えばさらに性能が出るだろう。

 ちなみにLG gramの動作音はかなり静かで、高負荷時にこそ「シュオー」という音が鳴るが、それ以外のときには動作しているのが分からないほど静かである。また、冷却モードを「低」にすると高負荷時でもかなり抑え目の音になる。ちなみにベンチマークテスト中の本体の温度は、キーボードのファンクションキーの上辺りが約49℃と最も熱く、手が触れるパームレスト部分は最高でも約34℃程度に抑えられていた。なお、CPU温度は最高で95℃まで上がった。計測時の室温は28.8℃だ。

 どうも初期設定の内容が静音寄りになり過ぎているようなので、設定ソフトのアップデートなどでGPU性能を十分に出せるような設定になれば、誰が使ってもちゃんと性能が出る状態にできるのではないかと思う。まだ発売されてから時間が経っていないので、もしかしたら今後のアップデートでそうなるかもしれない。

PCMark 10のベンチマーク結果

 次に行なったテストは、動画編集ソフトの「Wondershare DemoCreator 5.8.1.4」を使用した動画のエンコードテストだ。約10分間のMOV動画をMP4動画に変換するのに要した時間を計測した。かかった時間が短いほどよいので、このグラフでは棒が短いほどよい結果ということになる。

 このテストでも、念のためPCMark 10の場合と同様に冷却モードを変更したテストも行なった。結果は初期設定のままでもGPUなしのモデルより速いという結果になり、冷却モードを変更するとさらに速くなるという分かりやすい結果となった。GPUの効果はちゃんと出ているようだ。そして、重い処理をするときは冷却モードの設定を変えればよいということも再確認できた。

Wondershare DemoCreatorのベンチマーク結果

 次はCPUのレンダリング性能が分かる「Cinebench R23.200」だ。CPUの性能だけを計測するテストなので2台の結果は同じ程度になるはずなのだが、なぜかGPUありのLG gramのほうが高いスコアとなっている。CPUとGPUの両方を使うPCMark 10のような処理だと相互に熱くなるが、GPUありでCPU単体のテストだけを行なうと、GPU分の冷却がCPUに回るのだろうか。

Cinebench R23.200のベンチマーク結果

 続いてはSSDのテストで、「CrystalDiskMark 8.0.4」を使用してテストを行なった。結果はかなりよく、SSDとしてはトップクラスの速さとなっている。ノートの体感上の速さにはSSDの影響が大きく出るのだが、結構ハイスペックなノートでも読み出し速度で2~3GB/s程度のSSDを搭載しているノートが多い。そんな中、これだけSSDが速いというのはLG gramの大きな魅力と言える。

CrystalDiskMarkのベンチマーク結果

 LG gramはゲーミングノートではないが、GPUを搭載しているということでゲーム系のベンチマークテストも行なってみた。各グラフを見ていただくと分かるが、さすがにGPUの性能が直接出るゲーム系のテストではGPUありのLG gramが大幅によい結果を出している。「3DMark Professional Edition v2.22.7359.0」だけは、また少々不思議な結果が出ていたので冷却モードを変更したテストも行なった。やはり冷却モードを変更すると性能が伸びる。

 実際のゲームを使用したベンチマークテストである「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」では、GPUなしのほうはゲームを快適に楽しむのは少々厳しい結果となっているが、GPUありのほうは問題なくプレイできそうな結果が出た。また、「エーペックスレジェンズ」も設定を少し落とせば楽しめそうである。やはりGPUの搭載はゲームに対しての効果が最も大きい。

3DMark Professional Editionのベンチマーク結果
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレのベンチマーク結果
エーペックスレジェンズのベンチマーク結果

 最後はバッテリ駆動時間のテストだ。文章入力を行なったり、PDFを見たり、Excelを使用したり、Webサイトを見たり、YouTubeを見たり、ビジネスでの使用を再現するためにPCMark 10を実行したりして、バッテリが100%から3%になって強制的に休止状態に移行するまでの時間を計測した。

 搭載しているバッテリ容量はGPU搭載モデルが90WhでGPU非搭載モデルが80Whなので、GPU搭載モデルのほうが多いのだが、結果はGPU搭載モデルのほうが短いという結果になった。やはりGPUを搭載している分だけ消費する電力も多いので、多少バッテリ容量が多くても消費電力がそれを上回るのだろう。また、2台をまったく同じように使えたわけではないので使用環境によっては結果が逆転することもあると思う。

 どちらにしても、GPUを搭載する16型ノートとしてはとんでもなく長いバッテリ駆動時間である。14時間も使えれば、駆動時間で困ることはまずない。LG gramはUSB PD対応のモバイルバッテリから充電することもできるので、もっと伸ばしたいのならモバイルバッテリを持ち歩くという手もある。

PCMark 10(バッテリ駆動時間)のベンチマーク結果

大きな画面のモバイルノートを求めている方には検討する価値がある

 LG gramについて見てきたわけだが、なかなか興味深いノートだったと思う。16型の大画面でGPUまで搭載していて、本体サイズもそこそこ大きなノート。にもかかわらずモバイルノートを謳っていて、実際に約1,285gというモバイルノートらしい軽さを実現している。

 一般的なモバイルノートでは、外出先などでどうしても作業効率の低さを感じてしまうことがある。それは画面の狭さであったり、キーボードの小ささであったり、モバイルノートである以上は仕方のない部分であることがほとんどだ。だからと言って、大画面ノートを持ち歩いたら大きいし重いしで持ち歩くのが嫌になってしまう。

 ところがこのLG gramは、そういったノートの痛し痒しな部分を綺麗に解決している。大画面で見やすく、解像度が高いので作業領域も広く取れ、キーボードの主要キーはほぼフルサイズで、熱の問題はあるとはいえGPUの効果も期待できる。それでいて軽くて薄くて持ち運びが苦にならない。モバイルノートの1つの答えと言うと大げさだが、新しいモバイルノートのジャンルとしてこれはアリではないだろうか。

 今まで、モバイルノートに対してちょっと不便だなと思っていた部分がこのLG gramで解決しそうな人は、検討してみる価値は十分にあると思う。

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