「パソコンまわりに置きやすい小ささで、音が良いアクティブスピーカーが欲しい」、「でも何十万円とかは無理、できれば10万円以下で」という皆さんこんにちは、私もそうです。
そんな我々にとって、以前から“小さな高音質アクティブスピーカー”を作り続けてくれているメーカーが、AV Watch読者にはお馴染みのクリプトン。日本の“ガチな”オーディオメーカーで、上はペア約100万円のピュアオーディオスピーカーを手掛けつつ、下は49,800円(税抜)のアクティブスピーカー「KS-11」もラインナップする、懐の深さが特徴だ。
そんなクリプトンから、“小さなピュアオーディオスピーカー”として、また注目の製品が登場した。6月24日から発売された、Bluetooth受信も可能な「KS-33」だ。価格は79,800円(税抜)と、KS-11よりちょっと高価だが、聴くと「ああ、これは完全にピュア用スピーカーだわ」と、納得できるクオリティを持っている。
クリプトンの小型スピーカーの音を聴いた事がある人は、「おっ、どんな音かな?」と、興味を持つだろう。一方で、「ああ、写真は見たことあるけど聴いたことない」という人も多いはずだ。実は、それも無理はない。クリプトンのPCオーディオ向け「KSシリーズ」は“お店で聴けないスピーカー”だからだ。
もともと「KSシリーズ」は、クリプトンが「高級スピーカーばかり作っててもダメだ。気軽に良い音が聴ける価格とサイズのスピーカーを作らなきゃ、オーディオ業界が盛り上がるわけない!」と、コストパフォーマンスを重視して開発したシリーズだ。そのため、価格をとにかく抑えるために、あえて量販店には置かず、直販サイト限定で販売しているからだ。
要するに“気軽に聴けないスピーカー”なのだが、「PCスピーカーなのに超マニアックで、音が良くて、そこそこ安いヤツがあるらしい」と口コミで広まり、いつのまにか人気シリーズになった……というわけだ。
それゆえ、「興味はあるけど、どんなラインナップがあるのか知らない」とか「各モデルで音がどう違うの?」と気になっている人も多いはず。新モデルの「KS-33」を試聴すると同時に、10万円以下でクリプトンが展開している3機種「KS-55Hyper」(税抜99,800円)、「KS-33」(税抜79,800円)、「KS-11」(税抜49,800円)の違いや、どんな人にどのモデルがオススメかをまとめていく。
KSシリーズの違い
モデル名 | KS-55Hyper | KS-33 | KS-11 |
税抜価格 | 99,800円 | 79,800円 | 49,800円 |
筐体 | フルアルミ | フルアルミ | 側板樹脂 それ以外アルミ |
ユニット | 30mmツイーター 64mmウーファー |
64mmフルレンジ | 64mmフルレンジ |
DAC対応ファイル | 192kHz/24bit LPCM DSD128(5.6MHz) |
192kHz/24bit LPCM | 192kHz/24bit LPCM |
出力 | 35W×4=140W | 35W×2=70W | 35W×2=70W |
入力端子 | USB2.0 ステレオミニ 光デジタル音声 |
USB2.0 ステレオミニ 光デジタル音声 |
USB2.0 ステレオミニ 光デジタル音声 |
Bluetooth コーデック |
SBC/AAC aptX/aptX HD |
SBC/AAC aptX/aptX HD |
SBC/AAC aptX/aptX HD |
外形寸法 (幅×奥行き×高さ) |
109×203.4×159.5mm | 87×105×176.5mm | 89.5×105×176.5mm |
重量 | 2kg(右)/1.9kg(左) | 左右各約1.6kg | 左右各約800g |
3機種はいずれも基本的な機能として、USBでPCと接続して音を出すUSBスピーカーとして使える。再生できるデータは、PCMが192kHz/24bitまでで、KS-55HyperのみDSD128(5.6MHz/1bit)まで再生できる。
さらに、ステレオミニのアナログ音声入力と、光デジタル入力も搭載。普通のアクティブスピーカーとして活用したり、テレビの光デジタル音声出力と繋いで、テレビスピーカーとして使う事もできる。
加えて、Bluetooth受信もでき、コーデックはSBC/AAC/aptX/aptX HDまでサポート。つまり、パソコンやテレビなどを使っていない時は、スマホとワイヤレスで接続して、Bluetoothスピーカーとしても使える。
見た目が“ザ・スピーカー”なので機能もシンプルかと思いがちだが、実は“デジタルオーディオシステム”的な製品であり、使ってみるとわかるのだが、日常生活でかなり活用シーンが多い製品でもある。
新モデル「KS-33」の特徴
ラインナップの大まかな違いをおさらいした上で、新モデル・KS-33を見ていこう。スピーカーの形状はKS-11と同じで、立ち位置としてはKS-11の上位モデルにあたる。
デザインと形状が同じなので、パッと見違いがわからない。しかし「何が変わったの? これ」と手でつかんで持ち上げてみると「!!」と、一発で違いがわかる。筐体の剛性がまったく違うのだ。
御存知の通り、一般的なPC用スピーカーの筐体はプラスチック製。剛性が低いので、指で叩くと「コンコン」「ポンポン」みたいな音がする。スピーカーは、ユニットが振幅して音を出すので、当然ながらその振動が筐体に伝わる。筐体の剛性が低いと、その振動により、筐体自身が“鳴って”しまい、プラスチックの響きが、音にプラスされる。これでは、音が良いわけがない。
そこで、エントリーモデルのKS-11は、筐体の中心、つまり前面~天面~背面~底面が、アルミの押し出しで作られている。ぶっちゃけこれはかなりお金がかかる。ピュアオーディオならわかる話しだが、PC用スピーカーとしては「え、そこまでやるの!」という“ガチさ”だ。
ただ、アルミ製なのは筐体の中心だけで、両サイドの側板はモールド樹脂のパネルになっている。そのため、中心部分を指で叩くと「コツコツ」と“鳴かない”が、両サイドは「コンコン」と響いてしまう。
上位モデルKS-33は、ついにこの側板もアルミパネルにした。つまり、筐体全てがオール・アルミフレームになった。「なんだ、違いはそれだけか」と思うかもしれないが、大きなパーツをアルミで作るのは非常にコストがかかる。普通のメーカーであれば「オールアルミのPCスピーカー? そんなの高価過ぎて売れないよ」とボツになるところだが、「音が良くなるならやるしかない」と作ってしまう。ここがPC周辺機器メーカーではなく、“オーディオメーカー”らしいところだ。
なお、搭載しているユニットはフルレンジで、デンマークTymphany(旧Peerless)の64mm径。これはKS-11とKS-33で違いはない。
こだわりは側板だけではない。KS-33はフルデジタル・アンプを、向かって右チャンネルの筐体に内蔵しており、そこから左チャンネルスピーカーへと、専用のケーブルで接続している。
このケーブルの長さが、KS-11に付属している2mから、KS-33では3mに長くなった。大画面テレビと組み合わせたユーザーから、「長さが足りない」という声が寄せられたからだそうだ。
普通なら「左右ケーブルが長くなりました」「あ、そうですか」で終わりだ。しかし、「長くなると音が悪くなる……これはイカン!」と考えるのが、オーディオアクセサリーメーカーでもあるクリプトン。KS-33では、長くする代わりに、線材に高純度なOFC線を使った新しいケーブルを開発。以前の短いケーブルと比べ、「一層透明度の高い再生音になった」そうだ。
こだわりはまだまだある。これはKS-11も同じなのだが、KS-33の底部には、大きなインシュレーターが3点支持で取り付けられている。普通のPC用スピーカーなら、何もついてないのが当たり前、ゴム足があったら良かったねレベルだが、クリプトンの場合は、ピュアオーディオ用インシュレーターとして普通に単品販売しているインシュレーターと同じ、「ネオフェードカーボンマトリックス3層材」と呼ばれるガチな素材を、低価格スピーカーにも投入している。
カーボンの板は、硬い床に落とすと「カーン!!」と高い音で“鳴いて”しまう。そこで、三菱ガス化学が開発した「ネオフェード」という特殊な素材を、カーボン板とカーボン板のあいだに、サンドイッチのように挟んで3層構造にした。ネオフェードには、振動エネルギーを効率良く吸収し、熱エネルギーに変換する性質がある。カーボンに伝搬された振動を、ネオフェードで熱に変える事で、スピーカーの振動を、設置した机などに伝えない……という仕組みだ。
ほかにも、ACアダプターが音質重視で巨大とか、そこに刺さっている電源ケーブルが「これPCスピーカー用じゃないでしょ」とツッコミたいほどぶっといとか、細部のこだわりを挙げればキリがないのだが、こうした“オーディオの高音質化ノウハウ”をPCスピーカーに投入しまくったのが、KS-33というわけだ。
余談だが、リモコンも付属している。手が届く範囲に設置している場合はフロントパネルのタッチ操作が可能だが、離れた場所に設置してゆったり楽しむ時にはリモコン操作が便利だ。
KS-33とKS-11を聴き比べる
では、エントリー機のKS-11と、新登場の上位機KS-33で、どれだけ音が違うか聴き比べてみよう。ノートパソコンにUSB接続し、Amazon Music HDからハイレゾファイルを再生する。
まずはKS-11。私は普段、パソコン用スピーカーとしてKS-11を使っており、ほぼ毎日その音に触れているのだが、ぶっちゃけ、PC用スピーカーとは思えないほど音が良い。
例えば、「藤田恵美/Best of My Love」を聴くと、冒頭のギターの質感描写が良い。ギターは、弦の震える金属質な硬い音と、その音を響かせる木製ギターの温かい音が重なって構成されているのだが、その音の質感の違いがちゃんと聴き取れる。筐体の剛性が高く、筐体が“鳴き過ぎていない”ため、個々の音の違いが描写できているわけだ。
フルデジタルアンプの採用でSN比も良く、ジャネール・モネイのアルバム「Dirty Computer」から「Make Me Feel」を聴くと、無音部分から、ズバッと切り込むような低域のビートがとにかく鮮烈。インシュレーターが振動を机に伝えないため、デスクトップ設置でも音場は広大で、そこに定位する音像の輪郭も明瞭。広がる空間に、音が飛び交うような感覚は、まさにピュアオーディオそのもの。「PC用スピーカーってこんなもんでしょ」という一般的なイメージを大きく超える驚きがある。
聴けば聴くほどKS-11は「よく出来たスピーカーだなぁ」と関心する。それゆえに、KS-33に対して、「ぶっちゃけ、側板をアルミにしただけで、そこまで音がグレードアップするのかな?」と不安も頭をもたげる。
しかし、KS-33を再生した瞬間に「すいませんでした」と土下座した。
音が出た瞬間にわかるのが、情報量の増加とメリハリのアップだ。「藤田恵美/Best of My Love」のアコースティックベースが激変。低域の分解能がアップし、例えば「グォッ!」と低い音が音圧がたっぷり出てくるシーンでも、ベースの弦がブルブルと震える細かな音が、KS-33の方がかなりクリアに聴き取れる。
KS-11もKS-33も、パワフルで豊かな低音が出るのだが、その低音の中に、どんな音が含まれているかという見通しの良さが、KS-33の方が圧倒的に上だ。
ジャズボーカルの「ダイアナ・クラール/月とてもなく」も、余分な響きが無い音のクリアさ、音像のシャープさに驚かされる。KS-11でも、リアルで生々しい描写であり、ボーカル音像の口の動きもよく見えると思っていたのだが、KS-33は開閉する口の中の湿り気まで伝わってくるほどリアリティがあり、聴いていてゾクゾクする。
側板がモールド樹脂からアルミになっただけで、ここまで変わると思っていなかったので、驚きの一言。筐体の“鳴き”が少なくなった事で、ユニットから放出された音が、そのままクリアに耳に届いた結果が、この違いなのだろう。
低音の見通しが本当に良い。「月とてもなく」では、アコースティックベースとピアノが共演しているが、ベースが「ブォン」と豊かに響く中で、ピアノの左手(低い音)の動きが鮮明に聴き取れる。KS-11では、ベースの低音に埋もれがちで、曖昧な部分が、ビシッとシャープに描写されるので聴いていて気持ちが良い。
関心するのが、こうした違いがありながら、KS-33が決して腰高な、高域寄りのバランスになっていない事だ。低域を微細に、膨らみを抑えてタイトに描写しながらも、必要な量感と、ズシンと沈み込む低音の深さはキッチリと維持しているので、低域の迫力や存在感が低下していない。KS-33の開発にあたっては、側板を変更するだけでなく、それに合わせて音のチューニングも改めて行なわれたそうで、その成果がキッチリ感じられる。
KS-11とKS-33の大きな違いは、低域のタイトさ、情報量の多さ、音の輪郭のメリハリアップなどだが、実は、音場とそこに定位する音像の“場所”にも大きな進歩がある。
例えば先程の「ダイアナ・クラール/月とてもなく」、KS-11で再生すると、音場がフワッと横に広がり、そこにベースやピアノが並び、中央にボーカル……という音像定位となる。しかし、KS-33で再生すると、中央のボーカルが1歩、いや、1.5歩ほどグッと前に出てくる。ボーカルの音がよりクリアに、生々しく聴こえたのは、情報量の増加と同時に、音像が前に出てきた事も関係している。
これにより、ボーカルと背後の楽器の配置が立体的になる。それだけでなく、ボーカルや楽器の音の余韻が、広がっていく空間に注目すると、KS-33の方が、明らかに奥行きが深い。ピアノの響きが「ゴーン」と奥まで届く様子を聴いていると、「俺の部屋ってこんなに広かったっけ」と思ってしまう。余分な響きが抑えられた事で、音場の描写能力もアップしたのだろう。
もちろん、この立体的なサウンドには、スピーカーを設置している机に振動を伝えない、高性能なインシュレーターの存在も寄与しているはずだ。
ただ、ここで注意したいポイントがある。“音の良さ”では、確かにKS-33の方が、KS-11より優れている。ただ、全ての音源でKS-11が負けているかというと、そうでもない。
例えば、Netflixで映画を見ている時などは、KS-11の方が低域の響きが多いため、「グォオオ!!!」と重厚なBGMの低音が押し寄せてくるクライマックスシーンや、アクションシーンの爆発などは音が派手で、ケレン味がある。「映画を見るなら、KS-11の方が迫力あって良いよね」と感じる人も多いだろう。
ただ、KS-33で同じ映画を見ると、重厚なBGMの中にいくつものストリングスが織り込まれている事に気づいたり、「バゴーン!!」という爆発音がよりハイスピードで、トランジェント良く描写され、その鋭さが迫力に繋がっていたりと、情報量の多さという魅力は揺るがない面もある。音にこだわる人はやはり、KS-33の方に軍配を上げるだろう。
ちなみに、前述のようにKS-33は、左右スピーカーを接続する付属ケーブルがグレードアップしている。試しに、KS-11に付属しているケーブルに交換して聴き比べてみたが、確かにKS-33付属ケーブルにした方が、音場の広大さ、音像のシャープさが、より明瞭になった。この違いも、KS-33の高音質化に寄与している。KS-11ユーザーとしては、進化したケーブルの単品販売もお願いしたいところ。
KS-33とKS-55Hyperはどっちが音が良い?
KS-11とKS-33の比較で、“オールアルミか否か”で、音がだいぶ違うのは体感できた。では、KS-33と同じ“オールアルミ”で、より筐体サイズが大きく、さらにフルレンジユニットではなく、30mmのリングダイアフラム型ツィーターと、64mmウーファー(Tymphany製)の2ウェイ方式を採用した上位機KS-55Hyperと、KS-33を聴き比べたら、どっちが良いのだろか?
「そりゃ値段が高い上位モデルで、サイズも大きいし、ユニットも多いからKS-55Hyperの方が音が良いんでしょ?」と思うのだが、実際に聴いてみると、なかなかどうして、これがそう簡単な話しではない。
確かに、余分な響きの少ないタイトで情報量の多い中低域や、クリアで抜けの良い高音といったKS-33の特徴は、KS-55Hyperも兼ね備えており、上位モデルらしいピュアオーディオライクなサウンドになっている。
その上で、まず「KS-55Hyperが勝っているポイント」だが、強化されたバイアンプと、奥行きのある大きな筐体を活かして、低音の深さと、音圧の豊かさは、KS-33を上回っている。出力も35W×4で総合140Wと非常にパワフルであるため(KS-33は35W×2=70W)、パソコンの横に置いて、ニアフィールドで聴くだけでなく、テレビの前に設置して部屋に映画の迫力サウンドを響かせる……という使い方にも余裕で対応できる。これは確かに魅力的だ。
しかし、あくまで“パソコン用スピーカー”として、ノートパソコンの両脇や、キーボードの両脇に設置して聴き比べた場合、ぶっちゃけて言うと、個人的にはKS-33の音の方が好きだ。これはおそらく、KS-33がフルレンジスピーカーだから……だと思う。
KS-33は、下から上までの音をすべて1つのユニットで再生しているので、近くに設置しても、耳に入る音のバランスが自然で、まったく違和感はない。一方で、KS-55Hyperは設置位置が近すぎると、中低域よりも高域の方が多く耳に入る印象で、少しバランスが悪く聴こえる。
また、音場の感じ方も違う。KS-33とKS-55Hyper、どちらも広大な音場を描写してくれるのだが、KS-55Hyperを自分の近くに置きすぎると、聴いている自分が広がる音場の中に入り込みすぎて、音場の美味しい部分が自分の背中のあたりに展開しているように感じる。KS-33の場合は、キーボードの真横に設置しても、音場は自分の目の前に展開してくれる。
この問題は、KS-55Hyperの設置位置を工夫すれば解決できる。つまり、ノートパソコンやキーボードの真横ではなく、机のもっと奥の方へとKS-55Hyperを設置すれば、低音から高音までバランス良く耳に入り、音場も自分の前に広大に広がってくれる。
ただ、写真を見るとわかるように、KS-55HyperはKS-33よりも奥行きがある。つまり、机の奥に広いスペースがあれば良いのだが、置くスペースが限られている場合、そもそもKS-55Hyperを奥に設置する事ができない。そのような環境では、KS-55Hyperを無理に設置するより、KS-33を選んだ方が、体感するサウンドはハイクオリティになるだろう。
逆に、スピーカーをパソコンまわりだけでなく、テレビ用スピーカーとして活用したり、リビングに設置してBluetooth経由で音楽を流して、ゆったり距離をとって聴く……という使い方であれば、KS-55Hyperの方が間違いなく適している。
つまり、単純にどっちが上かという話しではなく、“聴く距離に合わせてどちらが適切か”が変化するのが、KS-55HyperとKS-33の関係と言える。
音の良いPCスピーカーが欲しければ迷わずKS-33を選ぶべし
個人的にKS-33は、これまで聴いてきたパソコン用スピーカーの中で、最強のモデルだと感じている。前述の通り、キーボードやノートパソコンの横など、極めて耳に近い、ニアフィールドで聴いた時のバランスの良さ、中低域のクリアさ、音場の広さなどは、KS-11を凌駕するとともに、上位機のKS-55Hyperよりも優れていると感じる。
パソコン机が広くて、スペースがあり余っている……なんて人は、多くはないだろう。限られたスペースに設置し、そこで最高のサウンドを再生するという役割において、KS-33の省スペース性と高音質は、KSシリーズとして、かつてない完成度に到達している。「音の良いPCスピーカーが欲しければ迷わずKS-33を選ぶべし」と言っても良い。
一方で、KS-33と同じ省スペース性を持ちつつ、ゆったりと響きの豊かなサウンドを聴かせてくれるKS-11も、PCスピーカーとしての実力は本物だ。比較相手が強いというだけで、これ単体で聴くのであれば、まったく不満は感じない。価格もKS-33より3万円ほど低価格なので、「とりあえずPCの音を良くしたい!」という人は、KS-11を選ぶと良いだろう。
ただ、ピュアオーディオの世界も楽しみたい! という人は、頑張って3万円の価格差を超えてKS-33を選んだ方が、結果的には幸せになれるだろう。KS-33の音は明らかに“ピュアオーディオ”のそれであり、オーディオ入門用スピーカーとしての風格を備えている。
KS-55Hyperは、机のスペースに余裕のある人や、テレビまわり、リビングまわりなどにも設置したい人が選ぶとマッチする。パソコンの操作をしながら聴く……という使い方だけでなく、ゆったりと椅子にすわって、スピーカーから距離をとって、音楽や映画、ゲームなどをじっくり楽しみたいという人にはKS-55Hyperがオススメ。そう考えると、KS-55Hyperは“PC用スピーカー”というよりも“極限まで小さくしたピュアオーディオのアクティブ・ブックシェルフスピーカー”と考えた方が、正しいと思う。
姿は似ているが、実際に聴いてみると大きな違いがあったKSシリーズ。環境や目的にマッチする1台を選べるラインナップが完成した事を、歓迎したい。
(協力:クリプトン)
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