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Saturday, May 28, 2022

「8K解像度に意味はあるか」を問う分析。人間の“目のスペック”に最適なのは - AUTOMATON

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Image Credit: Andre Tan

ビデオゲームが画面に描かれる際の解像度は、ハードウェアの進歩とともに向上の一途を辿ってきた。高精細な映像が求められ、近年では4K対応の機器も普及し、さらに高解像度な8Kの領域に踏み込む機器も登場してきている。「高い解像度には、どこまで恩恵があるのか」との疑問に応える分析を、海外メディアArs Technicaが取りまとめている。

Image Credit: Cafer Mert Ceyhan

解像度とはなにか

解像度とは、画面表示の細かさを示す度合いだ。たとえば、PC用では解像度1920×1080のモニターが一般的に普及している。この数字は、画面がどれだけのピクセル(画素)で構成されているかを表している。つまり、解像度1920×1080のモニターは、微細な点が横に1920個、縦に1080個並んで画面を表しているわけだ。そして、解像度および密度が高ければ高いほど、画面は高精細に見える。一方で、低解像度や大型のディスプレイに接近してよく見てみると、ピクセルがそれぞれ独立して見えるだろう。表示面積に応じてピクセルひとつひとつが大きくなったり、ピクセル間の隙間が広くなったりするためだ。この独立が認識できてしまう時、人間は「表示映像が粗い」と感じるわけだ。低解像度の動画を再生した際に感じる粗さも、少ないピクセルを拡大表示しているのが原因だ。

近年では解像度の向上は著しい。4K(3840×2160)解像度対応のモニターやテレビも普及しており、家庭用ゲーム機やPC側でも4K解像度の出力が可能な機器が増えている。また、さらに高解像度な描画を可能とする8K(7680×4320等)対応ディスプレイも登場しており、高精細な映像が追求されている。PlayStation 5は8K解像度への対応を今後予定しているほか、ゲーマー向けGPUでもお馴染みのNVIDIAは8K HDR解像度への技術開発もアピールしている。しかし、ここで気になるのが、「人間の目にはどこまで高解像度が必要か」という点だ。

Image Credit: Senad Palic / 『Crystal Castles』Atari, Inc.

8Kは必要か

結論からいえば、「8Kは基本的に必要ない」となりそうだ。というのも、海外家電レビューサイトRTINGS.comの分析によれば、8Kの解像度が“画質の良さ”に寄与するのは、かなり限られた環境となってくるようなのだ。例として、35V型テレビを0.6メートルの距離で見る場合には、4K以上の解像度の恩恵があるとのこと。つまり、35V型の大きさで4Kと8Kのディスプレイがあったとして、0.6メートルの距離から見比べれば、人によっては違いがわかるということだ。

しかし35V型といえば、表示部だけで幅は約77cm、高さは43cm。もはや小さめの机の天板の寸法である。筆者が実際に近いサイズの紙袋をディスプレイに見立て、0.6メートルの視聴距離でシミュレーションしてみたところ、かなり首を振り目をギョロつかせる必要がありそうだった。この環境で仕事やゲームをすると確実に首か目を壊すだろう。一方で、ちょっと離れて1.2メートルの距離から視聴する場合、4Kと8Kの違いを認識するには65V型以上のディスプレイが必要となるとのこと。65V型では表示部の横幅は143cm、高さは80cmとなる。マンション・アパート住まいなどでは、手に余りそうなサイズだ。

留意したいのは、ディスプレイの大きさによりけりで、適切な視聴距離が変わる点だ。大きな画面を近距離で見るのは、人間に快適な環境ではない。米国映画テレビ技術者協会は、適切な視聴距離について、最低でもディスプレイが水平視野角の30度を占める程度が目安だとしている。また、映画館のような体験を求める場合には40度ほどが目安のようだ。この基準に沿ってみると、65V型ディスプレイの適切な視聴距離は1.8メートルから2.4メートルとなる。この視聴距離を保ってくつろげる間取りは、リビングなどに限られるだろう。例として筆者の自室環境で計測したところ、モニターから1.8メートルの距離はタンスの中だった。いずれにせよ、日本の一般的な住環境で8Kディスプレイはオーバースペックとなる懸念が大きい。

Image Credit: RTINGS.com

さらに、1.8メートルから2.4メートルの視聴距離で65V型ディスプレイを見る場合、8K解像度は通常必要ないそうだ。というのも、視力1.0の人間の場合、視野角度にして60分の1度(1分)以下の差異は判別できない。つまり、ざっくり計算すれば、水平視野角の30度を埋めるディスプレイでは、水平解像度が1800あれば、それ以上の細部はそもそも判別できないということになる。したがって、ディスプレイは4K(3840×2160)解像度もあれば、多くの人には十分すぎるほど高精細なのだ。視力が1.0以上ある人や、モニターに接近して視聴したい人の場合には事情は変わるものの、それらは稀なケースだろう。

4Kの恩恵は受けやすい

一方で、1080p(1920×1080)以下のモニターから4Kへの乗り換えでは、違いを実感できる可能性が高い。たとえば、一般的な24V型モニターにおいては、視力1.0で視聴距離0.9メートル以内あたりから、4K解像度の恩恵を受けられるようだ。この視聴環境は、多くの人に当てはまるのではないだろうか。一連の分析をまとめると、4Kはちょうど人間の目の“スペック”に合った、十分な解像度というわけだ。8Kの恩恵は大型モニターやすこぶる視力のいい人など、限定されたケースで発揮されるに留まるだろう。

とはいえ、8Kならびにさらなる高解像度化の恩恵を受ける分野もある。VR機器だ。VRでは人間の視野を広く埋めるように、目の至近距離にディスプレイが存在することになる。離れて見る通常のディスプレイとは違い、高い解像度とピクセル密度が必要になるわけだ。高解像度技術は、そうした分野でどんどん本領を発揮していくことだろう。あとは、4Kゲーミングモニターなどがもう少し求めやすい価格になることを祈って待ちたい。


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