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Monday, April 18, 2022

クランク付き携帯ゲーム機“Playdate”レビュー。尖ったコンセプトが話題を呼んだインディー色の強いゲームハードがついに順次発送開始 - ファミ通.com

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 手回しハンドル(クランク)がついたPanicの小型携帯ゲーム機“Playdate”がいよいよ発送開始。今週より予約者の第1陣への発送が開始される。本誌ではひと足先にレビュー版を入手したので、その内容をご紹介しよう。

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短評: 独特でユニークなゲーム体験を味わえる小型ゲームガジェット

 さて、ぶっちゃけどうなのかとっとと結論を知りたい人もいると思うので先に短くまとめておくと、この製品はめちゃくちゃユニークで面白い。が、これまでの一般的な携帯ゲーム機を尺度にして捉えると誤解しやすいだろうとも思う。

 76×74×9mmというコンパクトなサイズ自体はゲームボーイミクロなどに近いものの、Playdateはバックライトのないモノクロ液晶だったりするし、遊んだ感覚は“テトリン55”など昔あったキーチェーン型のゲームが一番近い。

Playdate
カフェや移動中のちょっとした空き時間にサッと出したらカッコいい……かどうかはともかく、胸ポケットに普通に入る。

 それはクオリティが低いということではなく、提供する体験の質の違いがポイントだ。“コアなゲームを1~2時間じっくり遊ぶようなゲーム体験”よりも、むしろ“生活の中の15分間の空き時間にインディーゲームクリエイターによる他にはないユニークなゲーム体験を提供する”という性質のガジェットと捉えると近いだろうと思う。

 記者はかなり気に入ったので個人的に予約した分をそのままキープしようと思うが、それが“24タイトルのゲーム込みで本体価格179米ドル(税金、送料別)”という値段に見合うかどうかは、人によってかなり異なってくるはず。というわけでハード&ソフト面の内容をもう少し細かく見ていこう。

ハードウェア: クッソ小せぇ! スペック的にはローエンド寄りながら決してチープではない作り

 オレンジ寄りのイエローカラーで統一されたコンパクトなパッケージを開けると、中に入っているのは本体と「Have fun!(楽しんで!)」というメッセージカードでラッピングされた充電/データ通信用のUSBケーブル、後は最低限の説明と法律上必要な文章が書かれた紙切れぐらい。Wi-Fi経由でインターネットに接続し、アップデートと本体登録を行うとプレイ可能になる。

 そしてこの本体がめちゃくちゃ小さい。普通に片手に収まるサイズで、薄いのでシャツの胸ポケットにも無理なく入るレベルだ。携帯性は非常に高い。

Playdate
Nintendo Switchと並べてみるとこんな感じ。マジで片手に収まるサイズ。

入力: 基本は十字キー+AB+クランクの回転

 携帯ゲーム機としての操作系のインターフェースは、十字キーとABボタン、そして特徴であるクランクがほぼメイン。

 全部使うゲームもあるにはあるのだが、大体は“クランクメインでプレイするゲーム”と“十字キー+ABボタンでプレイするゲーム”のどちらかに分かれている感じで、必然的にそれによって本体の持ち方も微妙に変わってくる。

 十字キーやボタンの作りはコンパクトなサイズながらしっかりしていて、特に不満はなし。ユニークな楽器メーカーのTeenage Engineeringと共同設計したというクランク部分もグラついたりせずしっかりしている。

 ボタンの押し心地も悪くないのだが、これはシビアな入力を要求されるゲームにあたっていない事もあるかも。もしかすると指が太い人などは斜め入力などを駆使させられるゲームが出たりするとキツいかもしれない。

Playdate
クランクを使うゲームだと大体こんな感じの持ち方。ゲームによっては左手の親指で十字キーやABを押したりもする。ちなみにこれはエレベーターをクランクで操作してペンギンたちを効率よく届けていく『Flipper Lifter』。
Playdate
十字キー+ABでプレイするゲームだと両手で抱えるような感じ。これは壺男ゲーのBennet Foddy氏の新作『Zipper』。一撃必殺の侍をうまく動かして進んでいくターンベースゲーム。

 また、まだあまり活用されていないニッチな所で言うと、クランクの回転角度と方向以外に収納状態なども検出可能なほか、3軸の加速度センサーやマイク入力などもついている。Playdateは公開されているSDK(ソフトウェア開発キット)を使って自由にゲームを開発可能なマシンでもあるので、何かユニークな利用法を思いつく人が出ないか期待したい。

Playdate
実は3軸加速度センサーやマイク入力なんかも持っていたり。クランクの収納状態なども検出できるので、その切り替えを利用したゲームもある。

ディスプレイ: 思ってた以上にクッキリ。ただし暗所はやっぱりツラい

 ディスプレイは横400ドット×縦240ドット、バックライトのない単色のモノクロ液晶。中間色などはディザリングで表現することになる。発色はかなりクッキリしていていい感じで、普通の照明がある所なら室内でも特に問題なく遊べる。

 グラフィック的には(カラー化以前の)ゲームボーイやLCDゲームに近いが、それらよりも細かいドット絵になっているのがひとつの特徴と言えるだろう。あえて手描きイラスト的な歪んだ線を多用したり、レトロ感と今どきのドット絵のセンスを融合した面白いアートスタイルのゲームもちょいちょいある。

Playdate
アドベンチャーゲーム『Lost Your Marbles』は細い線のイラストがかわいい。あと本題から外れますが、黒い地を敷いた上にこんぐらいちゃんとテキストサイズがあるとギリ読んでもいいかなという感じ。
Playdate
いわゆるスネークゲーム系の『SNAK』は、めっちゃふにゃふにゃした描線。

 ただしバックライトがないので、室内で寝っ転がってプレイする時のような逆光ポジションや暗所はさすがにツラい。間接照明程度でもちゃんと光が当たっていればなんとか、といった所。天井の明るい照明に対して逆光でプレイするよりはまだ見やすい。

サウンド: スピーカーがびっくりするほどいい! 実はチップチューン以外もイケる

 サウンド面は実機を触ってもっとも驚いた部分のひとつだ。本体にはすごく小さいモノラルスピーカーがついているのだが、コイツの音がめちゃくちゃよくて、すごくクリアーな音でそれなりの音量を出してくれる。

 またヘッドフォン端子もついていて、こちらはステレオ。そして現状では未対応なものの、アップデートである程度本体からのBluetooth出力をサポートする可能性も示唆されている。レイテンシーや互換性まわりで難航しているようなのだが、ぜひ実現して欲しいところだ。

 ちなみにいわゆるチップチューン系の音をイメージしがちなビジュアルで、実際その手のBGMが入っているゲームも多いのだが、実はADPCMやWAV音源を使えるのでチップチューン系以外も問題なくいける。個人的にはクランクを使ってエフェクトをかけられるDJソフトとか出てきたら試してみたい。

その他: ストレージは全部入れても余裕。Wi-Fiは2.4GHzなのに注意

 ストレージは4GBのフラッシュメモリーで、最近のゲームハードとしては少なめだが、Playdateは基本的にゲームのサイズが小さく、大半が数十メガバイトレベルで、大きなモノでも150メガバイト程度、小さいものになると1メガバイトを切っていたりするのでコレで十分。シーズン1の24タイトルを全部入れても余裕であまる。

 ハードウェア面で注意しておきたいその他の部分としては、Wi-Fi機能が2.4GHzのみ(802.11bgn)ということだろうか。家庭内を5GHzで統一している人などは、ルーター側で2.4GHzのサブチャンネルを用意できないかなど調べるといいだろう。

ソフトウェア: 未知との遭遇を楽しむもよし、自分で作るもよし

 さてソフトウェア面の最大の特徴は、その供給方式だろう。シーズン1として24タイトルが本体価格に含まれていて、本体が届いて登録を済ませた時点から毎週2タイトルずつ供給されてくる形になっている(遅く届いた場合も同様)。

 これは開発が追いついていないといったことではなく、ゲーム自体はもう揃っていて、実際レビュアーは制限解除してもらって全タイトルを試すことができた。“未知のタイトルが毎週ふたつずつやってくる”という体験がPlaydateのコアのひとつになっているのだ。

Playdate
到着したタイトルはプレゼントのように表示されていて、開封アニメーションとともに正体が明かされる。

ラインナップ: 海外の有名インディーが勢ぞろい。ただしローカライズもお願いしたい

 シーズン1の対応タイトルは、海外の有名インディーゲームクリエイターが勢ぞろいした内容。国内では「知る人ぞ知る」といった感じの人も多いものの、“壺男”の高難度アクションゲーム『Getting Over It with Bennett Foddy』のBennet Foddy氏などが参加していて、海外インディーマニアにはかなりゴージャスだ。

 内容はかなり千差万別で、ハードウェア編で書いたようにクランクを使うものもあれば使わないものもあり、じっくりと読ませるタイプのアドベンチャーゲーム(『Lost Your Marbles』、『Echoic Memory』)や、そもそもゲームより簡易作曲アプリに近いもの(『Boogie Loops』)まであったりする。それらを開封してみて「ほう、こういうゲームなのね」と試す時間がなかなか楽しい。

Playdate
京都のChuhai LabによるChuhai Labsによる『Whitewater Wipeout』はサーフィンゲーム。クランクでボードの角度を調整してトリックを決めていく。

 ただしシステムもゲームも現状では全部英語で、テキスト皆無で直感的に楽しめるものもあれば(英語圏の人もやってみてようやく把握するタイプ)、英語を読めないと困るテキスト重視のゲームもあって、こちらもかなりバラバラ。

 というかそもそもこの画面で読むのは辛いテキストサイズのゲームもあったりするのだが、当初の毎週1タイトル配信のスケジュールだったらともかく、毎週2タイトルになったので少なくとも選べるのが救いといった所か。

 パニックジャパンではまず日本向けの発送に注力しつつ、プラットフォーマー兼パブリッシャーとしてできることを順次やっていくそうなので、グラフィックの中に描き文字でテキストを入れているゲームなどローカライズが難しいタイトルもあるかと思うが、可能な限りローカライズをお願いしたいところだ。

Playdate
Panic自らの作品『360』は、クランクでパドルを360度に動かせるブロック崩しゲーム。こういうのは英語読めなくてもオーケー。

『塊魂』高橋慶太氏の新作はクランクを活かしまくったさすがの出来

 シーズン1のタイトルの中で、もっともPlaydateらしく、かつ出来が良くて唸らされたのは、『塊魂』や『Wattam』などを手掛けた高橋慶太氏のuvulaによる『Crankin's Time Travel Adventure』だ。

 これもまたクランクのみでプレイするゲームで、主人公クランキンが居眠りでデートに遅刻しそうななか、クランクを回して主人公を進めていってゴールにいる彼女のもとに到達させればオーケー(ただし遅刻はしてるので股間を蹴られたりスープレックスを決められたりはする)。

Playdate

 もちろん単にクランクをぶん回していればクリアーというわけはなく、さまざまな障害がやってくるので、クランクを早回ししたり巻き戻したり止めたりしつつ、道中の余計なものに気を取られまくりのクランキンの習性を利用して避けるという、パズルアドベンチャー的なアタマを使うゲームとなっている。

 実際どういう謎解きなのかというと、ちょうちょが飛んでくる所では「花がある所では思わずかがんで嗅いじゃう」モーションを利用して回避したり、水平に鳥がぶっ飛んでくる所では「鉄棒があるとぶら下がって伸びをしてパーツに隙間ができる」のを利用して避ける……といった塩梅。

 チャカチャカ進んでゆくクランキンをクランクで動かしながら「ここで花に戻ってちょうちょを避けて、進んで鉄棒で鳥を避けて、そしたら今度はウンコが進んでくるからハードルを飛ぶ所で止めてやり過ごして……」とやるのが楽しいし、1ステージの短い中にさまざまなアイデアが詰まっているのでいい感じの気分転換になる(まぁ猛烈にクランクを回さないといけないステージもあるので、周囲の人に「何事か」と思われたりするかもしれないが)。

『Papers, Please』作者の新作など、シーズン1タイトル以外にも期待

 ちなみにシーズン1タイトルで終わりというわけではなくそれ以外のタイトル展開も計画されているほか、後述するSDKなどを使ってゲームを開発し、公式WebやUSBケーブル経由でファイルを転送すれば自作ゲームなども読み込めるのもポイント。

 例えば『Papers, Please』や『Return of the Obra Dinn』などで知られるLucas Pope氏は『Mars After Midnight』というタイトルを開発中であることを公表しており、シーズン2タイトルになりうるのか、それとも開発ブログを掲載しているゲーム配信プラットフォームItch.ioで独自に発売するのか、動向が非常に気になる。

開発環境はもちろん、ゲーム配信者向けソフトの計画も

 Lucas Pope氏の例のように、国内外のインディーゲーム界隈で“手軽に開発・配信できる携帯ゲーム機”としてそれなりに注目が集まっているようなので、Playdateの特性を活かしたゲームが沢山出てくるのを期待したい。

 開発環境としては、PC/Mac/Linux向けのSDK(ソフトウェア開発キット)が無料公開されているほか、Webブラウザーから利用できる開発環境“Pulp”も公開中だ。

Playdate
ゴールデンウィークあたりに触ってみたいところですな。

 また周辺ソフトとしては、今回プレス向けにPlaydateの画面とサウンドをUSBケーブル経由でPCやMacに転送できる“Mirror”というソフトが共有されており、時期は未定なものの一般公開予定もあるという。

 ミラーリングした画面とサウンドはOBSなどのゲーム映像配信ソフトに読み込ませられるので、自分で開発してみたゲームを実機で遊ぶ様子を録画してSNSに投稿したり配信するといったことも可能。PlaydateはPanicの初のゲーム機だが、もともと開発者向けエディタなどを開発・販売しているメーカーだけに、ニーズを捉えた準備をしてきている印象だ。

まとめ: 万人向けではないが、刺さる人にはブッ刺さる

 というわけでPlaydateは、かなり人を選ぶ製品だ。正直、一般的なゲームメーカーの新作を楽しみたいだけの人やヘビーなゲームをじっくり腰を据えて遊びたい人にはほぼオススメできないし、“ネット必須かつPC/Macがあるとベストで、英語への対応力もある程度求められる”というハードルの高さもある。

 しかしここまでの説明を読んで「そういう感じ好きなんだよね」という人には恐らく間違いのない、他にはないロマンやワクワク感が詰まったゲームハードでもある(価格の妥当性はその可能性込みで評価するかどうかによる)。この記事を読んでいるのはほとんど予約者の人の気がしないでもないが、あなたがそうなのであれば発送と到着を楽しみに待つといいだろう。

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