新型コロナウイルス感染拡大で、オフィス向け複合機や商業・産業用プリンター、プロジェクターなどの販売が落ち込んでいる。不透明な状況が続く中、コロナ後の生活様式や企業活動の変化にどう対応するのか。セイコーエプソンの小川恭範社長に聞いた。
―足元の状況をどう見ていますか。
「新興国を中心に経済が停滞していて、非常に厳しい状況だ。(事業別では)商業・産業用プリンターやプロジェクターの需要が停滞している。一方、先進国を中心に在宅勤務・学習の増加で、家庭用プリンターの需要が一時的に増えている。ロボット事業は中国を中心に需要が戻ってきた。4―6月期はかなり厳しいが、回復に向かうと想定している」
―工場の一部で生産停止を強いられました。サプライチェーン(供給網)をどう維持しますか。 「これまでは機種やジャンルによって生産地を変えていた。今後は同じ製品を複数拠点で生産していく方針だ。さまざまなリスクに対応したサプライチェーンの構築が必要になる」
―主に東南アジア・中国でプリンターを組み立てています。先進国での生産も検討しますか。 「将来的な方向性としては視野に入れている。そのための(組み立て工程の)自動化は考えていかなくてはならない。需要に素早く応える意味でも、消費地の近くで生産していく必要があるだろう」
―先行きが不透明な中、どのようにコスト削減を進めますか。 「昨年来メリハリをつけた投資を行っているが、まだまだ費用を抑制できるところはある。プロモーション費などを抑制する一方で、コロナ収束後を見据えて今後伸ばすところはしっかりと投資していく」
―アフターコロナの事業環境をどう思い描いていますか。 「(家庭用プリンターなどで)サブスクリプション(定額制)型ビジネスモデルの構築が進むだろう。商業・産業印刷ではデジタルを活用した印刷形態が増えるはずだ。加えて(世の中の流れとして)生産拠点の分散化が進む。人件費の高い地域で生産する場合は、工場の自動化が必須となる。我々はそういう世界を想定してロボットに力を入れてきた。こうした流れがさらに加速すると見ている」
【記者の目/デジタル化の進展見据える】
事務機器市場は在宅勤務の増加で需要が停滞。コロナ後もデジタル化の進展で印刷需要の減少が見込まれる。ただ、小川社長は「中長期の戦略を変えるつもりはない」と強調。テレワークの増加に対応した大容量インクタンク搭載型プリンター、事務機器にクラウドやアプリケーションを組み合わせたデジタル商材の拡販を進める。(取材=張谷京子)
日刊工業新聞2020年6月8日
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June 08, 2020 at 04:04AM
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