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Monday, June 7, 2021

アフターコロナを見据えた働き方とオフィス戦略の在り方-メインオフィスと働く環境の選択の自由の重要性を「原理原則」に - 株式会社ニッセイ基礎研究所

1|メインオフィスの重要性
イノベーション創出の起点や経営理念・企業文化の象徴と位置付けられるメインオフィスの機能は、テレワークでは代替できず、主として大都市圏に立地する「メインオフィスの重要性」は今後も変わらない。逆にメインオフィスで醸成される従業員間の信頼感は、テレワークの円滑な運用に欠かせない。

筆者がコロナ禍の中で昨年いち早く打ち出した「コロナ前後でオフィスの重要性は何ら変わらない」との主張を裏付けるように、オフィス戦略の先進事例である米アマゾン・ドット・コムと同グーグルが、コロナ禍の中で、あえて米国内でのオフィス増床を続行するとの力強い表明を揃って行った。

グーグルのCEO(最高経営責任者)サンダー・ピチャイ氏は、「社員間でコラボレーションしコミュニティを構築するために直接集まることは、グーグルの文化の中核であり、今後も我々の将来の重要な部分となるだろう。だから我々は、全米にわたってオフィスへの大規模な投資を引続き行う」と述べている。同社では、社内にコミュニティを形成しイノベーションを創出するための場としてのオフィスの重要性が企業文化として根付いているため、コロナ禍の中でも必要不可欠な投資としてオフィスの大幅な拡張を躊躇なく続行できているのであり、ピチャイ氏のブレない考え方に筆者は強く共感する。

両社ともに、米国全土でオフィス増床を行う計画だが、広範なオフィス分散化により、BCPの強化や全米の多様なコミュニティでの雇用増・投資増を通じた地域活性化・地域貢献などを果そうとしているとみられる。シリコンバレーやシアトルでは、一極集中による集積の不経済が一部で現れ始める一方で、ニューヨークには、ハイテク企業が近年相次いで進出し、両社もオフィス拡張に積極的に動いていることから、世界有数のメガシティであるニューヨークでは、集積の経済(メリット)が依然として働いているとみられる。

メインオフィスの重要性を熟知し実践してきた米国の先進的なハイテク企業では、コロナ禍が終息し従業員の安全確保が確認されれば、コロナ対応として速やかに発動したBCP(在宅勤務体制への移行など)を直ちに解除し、メインオフィスでの業務を全面的に再開するのが基本形であろう。すなわち、不動産を重要な経営資源に位置付けるCRE(企業不動産)戦略の下でのオフィス戦略を組織的に実践できている先進企業であれば、コロナ後には平時の体制に戻すのであって、最先端のワークスタイルやワークプレイスを活用したこれまでの戦略に大きな変更は生じないはずだからだ。

一方、多くの日本企業では、これまでメインオフィスをイノベーション創出や企業文化体現の場として十分に活かし切れていなかった、と言わざるを得ない。多くの日本企業の在り方としては、導入・実践が遅れている大本のCRE戦略をしっかりと取り入れた上で、それに基づく創造的なオフィス戦略を新たに構築することが急務だ。

メインオフィスの役割・在り方は、再定義するまでもなく、米国の先進企業がこれまで実践してきたように、コロナ前から既に明確になっている。日本企業が今やるべきことは、オフィスの再定義ではなく、米国の先進企業が実践してきた「オフィス戦略の定石」を一刻も早く取り入れることだ。

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